ウケる技術 水野・他 
[2006/07]
 
この世には生まれつきというか、口から生まれたんじゃないかと思う人がいる。そういう人は自己アピールの必要に迫られて身につけたのか、周りに面白い人を真似たのか、どちらかだと思ってた。ただ必要に迫られにせよ/憧れたにせよ、本当にイイのは上手い人から手取り足取り教えてもらう事なんだよね。

例えばコンパが終わった後の反省会で、「おまえさーあの会話はマズイよ」みたいに教えられると確かに伸びる。俺の大学の友達もそうだった。じゃあ元々上手かった友達はどうしたのだろう? 多分、もともと空気を読む能力が高かったのと、失敗を重ねたのと、バラエティー番組で学んだんだろう。けど、誰にも手取り足取り教えてくれる友達がいるわけでもないし、誰もがバラエティー番組で学べるワケじゃない。もっと意識化して言語化して、分類して、誰でも分かる形で伝えるモノが必要だとずっと思ってた。
だから

今まで「ウケる技術」はセンス、あるいは才能という一言で片付けられてきたのが現状でしょう。ところが、あらためて「ウケる人」の無数の会話を地道に整理していくと、誰でもマネできる有限のパターンの組み合わせに分解できることが分ってきました。

というこの本の前置きには感動した。というより、本当のことを言えば、タイトルを見て、手にとって何気なく開いたら、このページだったんだよね。

Case6:
この前の合コンで脈のない女を電話で口説く

<<before>>
男:もしもし。この前飲み会で会ったAですけど覚えてる?

女:う・・うん。 [明らかに覚えていない様子]

男:(うわぁ、覚えてないっぽい。もう無理なんじゃ・・・)
   今、何しているの?

女:家にいる。

男:あ・・・ああ、そうなんだ・・・ところで週末とか何しているの?

女:わからない。友達と遊んでいるかなぁ。

男:へぇ、結構忙しそうだね。 [自分で自分を追い込んでしまう]

女:そうだねぇ〜

男:あの・・・今週とか遊ぶの難しいかな? [超弱気]

女:ちょっと分らないね。
《以下省略》


<<after>>
男:もしもし。この前飲み会で会ったAですけど覚えてる?

女:う・・うん。[明らかに覚えていない様子]

男:いや、覚えていないと思うなぁ〜。オレが君ならオレの事100%覚えていないもん(ウケる技術19:深読み)

女:うん。覚えていない。

男:アハハハ! 正直だなぁ! 
  あのさ、この前、飲み会で、あの、○○が主催した飲み会があったでしょ。渋谷でやったやつ。

女:あっ、ハイ。

男:そう、そのとき、面白かったやついたでしょ。鼻からピーナツ飛ばして暴走してた。誰もしらないワハハハ本舗の梅垣のモノマネ必死にしてたやつ。(ウケる技術18:ディーテール化)

女:うん。いたね。

男:でしょ。その面白かった奴の・・・隣に座っていたAです。(ウケる技術24:裏切り)

女:アハハ。

男:そう。面白かった奴じゃないんだ。その隣に座っていたなんだ。これが! 今何してるの?

女:今?家にいるよ。

男:マジで!?オレも家にいる。気が合うねぇ!(ウケる技術11:詭弁)

女:・・・・・

男:・・・ええっと、、無理やり気が合うことにしてみました。(ウケる技術24:自分ツッコミ)
で、週末とか何してるの? いや、やっぱりやめた。週末何してるの?って聞いたら「予定ある」って言われそう。(ウケる技術19:深読み)

女:アハハ

男:ズバリ言う! 週末オレと遊んで! つーかもうちょっとくらいオレと会って喋ってよ。この前の飲み会で話したのなんて、「へぇ大根サラダ好きなんだ?」「う、うん」ぐらいしか覚えてないし(ウケる技術18:ディーテール化)

女:アハハハ。そうだね。
《以下省略》

え、皆は感動しなかった? いやー俺はスゲー感動したんだけどなぁ。今までの経験上、確かにトークが上手い友達ほど、このafterのノリで喋ってたから。それをこれだけ分りやすく書いてくれてることに、ただただ涙。ってのは誉めすぎだが、非常に役に立つレベルになってると思う。この本はウケる技術を分類して明示して、それぞれに例題がついてる。またそれ以外にも色々と役に立つ事が本に書いてある。特にナイスなのは、この本に書いてある技術を使って失敗した例があること。皆の周りでもいない?ウケようとして、いつも場を白けさせる人。そいういう例題もあるから奥が深いと思う。

ただ、この本に書いてる技術全部35個をマスターし、自由自在に使いこなせると逆に失敗すると思うんだけどね。知人でもいるんだよ。会話はめちゃうまい。大学が関西地方で、エセ関西人みたいなノリで喋る。会話の上手さだけなら、大学時代の遊び友達と同じレベルに行ってる。けど、彼はなかなか彼女ができないんだよね。その彼はオレと違ってコンパでの活躍度が高いから、よく呼ばれてたんだけど、全然彼女ができたという話は聞かなかった。まるで決定力のない日本のFWのようで、パス回しは上手いのだがシュートが決まらない。そもそもあいつはシュートを打ってたのだろうか??きっと柳沢みたいにキーパーと向かい合ってもパスだしてるんじゃ、と思わせる雰囲気があった。

だからこの本の帯にも「ウケた後どうするかは自己責任で」みたいな事が書いてある。ウケだけでは恋愛は始まらないからなぁ。おせっかいで言うと、沈黙を作れるか?なんだよね。その友達は会話が上手いからこそついつい喋っちゃうだろうなぁ、と思ってた。まるでラブホテルの部屋に入ってとりあえずテレビをつけちゃうような、そんな雰囲気があったんだけど。だから、この本だけだと足らないかもね。

もちろんめちゃくちゃシュート力がある奴もいる。けどやっぱり、それと女性と幸せになるのは違うんだけどね。中学校の一つ上の先輩で物凄くモテてた人がいた。もちろんカッコよくて、うちの学年でもファンの女の子が多かった。その人がこの前結婚式だったらしく、兄貴から写真を見せてもらったんだけど、奥さんはそこまで美人じゃなかったんだよね。そういうのって、なんか大事だと思ったなぁ。


ということで、この本を激プッシュしているワケじゃないけど、一度ぐらい読んでみる価値はあると思うよ。ここで紹介されているウケる技術の5個ぐらいはできるようになっていた方がいいと思うから。

本のあとがき。
本書では、ウケる技術をすべて並列させ同じ扱いとしてきましたが、実は大きく四つのカテゴリーに整理することが出来ます。

空気・共感モノは、場の空気を読み、その空気を拾う技術のことです。コミュニケーションはアドリブだとする本書では、受ける為の基本的な考え方を含んだ重要なカテゴリーです。《略》

◆キャラモノとは、空気・共感モノとは逆に、場の空気を作り出す技術のことです。素の自分の状態からモードチェンジして、あるキャラクターを演じ、演じる事で笑いに繋がる、場の「ひずみ」を生むモノです。

前後モノは、会話文の前と後で逆の関係を作る事によって、聞き手の期待の逆を行く、いい意味で裏切る技術です。後にくるオチの効果まで逆算できる「計算高い」ところがある人はこのカテゴリーに強いといえるでしょう

クリエーティブモノは応用レベルの技術です。場の空気を読んだりつくり出したりすることとは別に、純粋にアタマの中で面白い事を考えている人が得意な技術です。《略》
   
ということで、あんまり周囲の事ばっかり書いてもアレなんで、自分の事も包み隠さず書きます。

大きく分けた4分類では一番得意なのは当然クリエーティブモノかな。オレっちは斬新な喩えを生きがいにしてるからw 空気・共感モノも感情の分析の点では得意だけど、拾ったり、突っ込みを入れるようなのはやっと普通になったかな。前後モノも、アタマの別地点で冷静に計算しているのは得意だけど、オチを考えて喋っては無いかも。で、一番苦手なのはもちろんキャラモノ (笑 最近は、「音楽聴いて紅茶飲んで、そればっかでダメなんだよねぇ」ぐらいは言えるようになった。え、キャラになってない?

よく最初に主人公に攻撃力と防御力を割り振る事が出来るゲームがあると思う。そしたら空気・共感モノは間違いなく防御力だね。ホントに会話が上手い人は、スベった後のリカバリ能力が高い。意識的にスベることもできる。リカバリ能力がないと、なかなか斬新な攻撃をする勇気は出ないと思う。バンザイアタックするぐらいに無謀な人は別だけど。だから、場の空気感知能力から喋ります。

それに関してはこういう育ちなら必要に迫られて身につくと思う。そうじゃない人がどうやって伸ばすか?については上手くアドバイスできない。けど、外国とか言葉が通じない場所に行けば、嫌でも空気を読む力は鍛えられると思う。 

あ、重要なこと忘れてた。俺のその友達もホントに空気感知能力が高かった。けど、高い人ほど告白してどういう結果になるか分るんだよね。で、分るからこそ告白できない。けどね、告白して振られて、そこから出発するんだよ、恋愛ってもんは。そんなの当たり前だと思うのに、最初に振られる勇気が無い人がオレの周囲には多すぎる気もする。。告白することで、やっと向こうが意識的に見てくれるんだから。そうじゃなくても意識的に見られる人なんて、男の3割くらいだって。だから、空気感知能力をあげるほどに、勇気も上げれないとね。

会話に関しては、本当のことを言うと、中学校の頃に遊んでたPCゲームでの主人公のトーク力に惚れたんだよね。「そんなことしたら、お茶の間どっかーんになっちゃうよ」とか今でも使う時があるからなぁ。あの分野でのシナリオライターとしては最高レベルだったから。真似したのがバラエティーでのタレントとかじゃない所が相変わらず激マイナー路線なんだけど。個人コーナーに書いていたけど、リンク張っておきます。昔見てたアダルトビデオのタイトルを公表するようなものなんだけど、まあいいでしょう。こちら

それ以来、なんとなくその主人公のノリを共有しようとしてたんだと思う。それもあってか高校時代はトークが下手とは思わなかった。口は上手かったから、トークも上手いと思ってた。「若井クンは喋らないといいんだけどね」と言われた時は愕然としたが、直さなかったなぁ。

けど、大学生になってコンパで自分の無力さを痛感したワケですね。やっぱりあの短期間で向こうが気に入る話題を出しつつ引っ張っていくのは、かなり難易度が高かった。そもそも殆どの人と話題が合わないからどうしようもないんだよね。それまでは同じ学校だったりしたから共通の話題に困らなかったから。

だからそれを鍛えようか悩んでいたら入院x2で一気に別の世界に行ってしまった。けど、独創的な喩えとかは、その状態で見つける事が多いんだけど。1998年:R.とか聴きこんでいる時に友達が出来て、彼もすげートークは上手かったんだけど、「仲良くなってみると、あんたすげー面白いよね」って言われたんだよね。俺が何か言うと「そのネタ貰った」とか何度か言われてさ。そいつと一緒に遊びながら、少しずつ身につけたんだと思う。やっぱりそういう本人の中にある面白さに気づいて引っ張りだしてくれる友達は貴重だよ。だからすごく感謝してますw

この本でも、「あなたは面白い」 さらには「あなたは気づいていないかもしれないけど、今こんな面白いことを言った」というように、表面上は相手を攻めたり攻撃したりするトーンであっても、ベースには相手が「面白い事を言っている」部分をくまなく拾ってあげようという気持ちがあること。相手を「立てる」サービス精神のあらわれこそが、ツッコミにほかなりません。と書いてるから。これの視線は深くて優しいと思う。

ということで、あんまり参考になったか分らないけど、これが経緯です。
この本もお勧めだし、あのゲームも口下手な男の子にかなりお勧めよ (笑 

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