Sam Cooke
真の男は社会と向き合う
[2002/03/01][2011/12/10]

Soul3大偉人の1人にして、Deep-Soulの始祖でもあるSam Cooke。Soulの中で一番有名な曲といえばA Changes Gonna Comeだけど、この作品の収録順と同じくKeep Movin' Onと連続して聴くとより価値がある。この二曲を聴き込めば、どんな場所に落ち込んでも、再び歩く勇気がわいてくる。どんな状況で聴いても心に飛び込んでくる。それこそがSoul Musicだから。何よりも

「彼が1番優しくて、1番光を持ってる」

Soulの本質は光・優しさです。落ち込んだ時に、上手く行ってる奴から「がんばれよ」なんて言われても余計に惨めになってしまう事もある。逆の立場になったら、とことん落ち込んでいる人にどう声をかけていいか分らない時もある。結局、その時に声をかけれる資格を持つのは同じ辛さを経験してる者だけです。そりゃ無いよりはいいかもしれないけど、黙って見守られてる方がマシな時だってあります。上から声が聞こえてきても、俯いた顔じゃ無理です。横から声が聞こえてこれば、少し首を動かすだけで聴けます。けど、R&Bの凄い所は地面から声が聞こえてくる所です。生まれて初めてです。「地面から声が聞こえてくる」と思ったのは。Samはそれ位に凄いです。

優しさの凄さを説明するのは難しいです。逆に視線の凄さを説明するのは簡単です。Stevie Wonderの視線の凄さはAll is Fair in Love, All in Love is Fair(全ての人は恋愛の前で平等、恋愛で生じた全ての出来事は等価)が示してる。これに震えない人は精神性の親和性が零だと思う位。視線は最終的には普遍的な言葉になります。けど、優しさは違います。優しさの度合いは状況が酷くならないと分かりません。それが世の中の事実だと思っています。

美人な社長令嬢にとって、全ての男性は優しいと思えるでしょう(笑 けど、彼女が顔面火傷になったら半分はいなくなります。親の会社が潰れた日には、誰もいなくなるかも知れません。けど、最後まで側にいるのはSam Cookeです。卑近な例で説明するとこれが一番だと思う。


一言で言えば「家ぶっ飛びなら、学校で荒れます」 「学校ぶっ飛びなら、家で引きこもりです」 そんなもんです、世の中は。自分の周囲でもそこそこいたしね。学校で荒れてた人も、家で引きこもってた人も。色々歳をとると、彼らの抱えた理由が分るようになった。幼い頃からぶっ飛んでる人ってのは何かしらの理由があるもんだから。日本人ラッパーのZEEBRAの話を最近、たまたま週刊誌を読んで知りました。「なるほど、確かにぶっ飛んだ幼年時代だよ・・・」

これだけ優しい歌を歌えるSam Cookeは生まれた環境もヘビーだったんだろうとずっと思ってた。父親が聖職者とは知ってたけど、きっとMarvin Gayeの父親ばりの酷い親だったんだろうと。じゃないとこの優しさが生まれた理由が説明つかないと。けど、本作を聴き込んだ数年後、Sam Cookeの伝記を読んだ。Samの父親はMarvin Gayeの父親と同じく牧師でも、正反対で人格者だったみたい。伝記でも否定的な記述は皆無だったから。

ずっとSamの深みのある笑顔と優しさに感銘を受けてたけど、幼少期の家DEEPは無いのか。それよりも黒人として自らのレーベルを作って、社会の差別に先頭を切って立ち向かっていったからこそ、この歌の説得力が生まれたんだと。Samの死因には色々な説があるけれど、個人的には80%以上の確率で国家に殺されたと思ってます。Sam Cookeがずっと生きていたら、アメリカという国の社会の変革スピードは倍以上にはなっていただろうし、黒人初の大統領も1980年代には達成していたと思う。それぐらいにA Changes is Gonna Comeに代表される曲群は価値があるし、音楽レーベル設立も含めてアメリカのビジネスシーンの中で具体的に一つずつ実績を積み重ねていたのだから。そして、そんな将来像をどうしても受け入れたくない人達がいたのだと。

A Changes is Gonna Comeの中でも一番良い部分は、どん底から再び歩く瞬間を切り取った「It's been too hard Living. But I'm Afraid to Die. Cause I don't know if something is beryound Sky (生きるのは辛いけど、死ぬのも怖いんだ。なぜなら僕はあの空の向こうに何があるのか知らないから)になる。あの空の向こう側を目指して生きるのが人生であって、それ以上でもそれ以下でもない。これを日本語にすると《空色の絶望感》になるとずっと思ってる。


僕は11歳の時に学校でも家でも色々とあって居場所が全てゼロになっちゃった。「一度は自殺を考えたことがある」レベルなら日本人の10%ぐらいは該当するんじゃないかな。実際に手前まで言った人も数%ぐらいはいると思う。ビルの屋上まで行ったとか、気づいたら刃物をもって自分に向けてたとか、そんな情景。あの時、自分は洗面所に立ってた。血が出るならせめて洗面所の方がいいと思ったから。けど、死ぬ勇気も無くて、しょうがなく岡の上の公園までふらふら歩いていった。そしたら、そこから見える伊吹山が凄く綺麗で・・・。その景色を見てたら「今、自分自身に一番酷いことが生じた。けど、だからこそこの先は、これよりも酷いことは全く生じないということ。それはひとつの希望かもしれない。なら、僕ももうちょっと生きてもいいかもしれない」と素直に思えた。

中学の初めに洋楽を聴き始めたら知らず知らずにR&Bにハマっていった。そしてSam Cookeにまでたどり着いたのは23歳の時。この曲を聴いて、やっとあの状況を《空色の絶望感》と言葉にする事が出来た。自己の核を言葉にするのをずっと望んでいたから、そういう意味では悔いは無い。

けど、あの時以来、愚かさを積み重ねてきたのも事実。
今までだって、ぶっ飛び度数をかいま見て怖がる周囲だから正しいとは思えなかった。けど、しょうがないと思ってた。誰かから何か言われても、「生まれた環境も育った環境も捻じ曲がっていただけで、俺自身は真っ直ぐ歩いてきたつもりだけど」と言ってた。実際、R. Kellyだってぶっ飛びの混線なんだし、彼には選択権が無かったと思うから。初めて付き合った女性は同じように小学校の頃にクラスでいじめられた体験を持ってた。そこで強くなって、逆にいじめかえして、最終的には中学時代に生徒会長までやってた。だから自分の事も素直にしゃべったけど、「私には重過ぎる」って泣かれて。。あれ以来、僕は恋愛に何も期待しなくなった。その愚かさが積もりに積もって破裂したのが18の冬

このアルバムはSamのBestよりも感銘を受けるけど、気に入った曲を並べると法則性がある事に気づいた。

タイトルに「Boy」が含まれる曲ほど凄い
When a boy falls in loveやi'm just country boyはホント最高。the riddle songやtry a little love、there'll be no second timeもかなり凄い。もちろん有名曲が凄いのは当然なんだけど、個人的に感銘を受けたのはこれらの曲群。「涙が出ない位に泣ける」時ってある。23歳の頃は毎晩聴いてた。色々振り返るとWhen a boy falls in loveが分岐点だったね。それがこの世の答え。

本人自身が背負いきれてない状態で相手に見せること自体が間違いであって、本人が出来ないのに相手に望むのが問題外。それなのに失望するのが一番愚かなのだ。そんな当たり前の事もこの作品を聴きこまないと分からなかったです。
A Changes Gonna Comeの中で個人的にもうひとつの山場と思うのが、
Then I got to my brother
And I say brother help me please
But he winds up knocking me
Back down on my knees

の部分。けど、同じような経験をしたことが無いので正しい訳は分りません。この部分を《空色の絶望感》と並ぶ日本語にしてくれる方を切実に待ってます。それでこそ、本当の意味でA Changes Gonna Come、この曲を生まれた地点からを受けとめたことになると思うから。

この歌で1番大事な事は「前を向く事」だと思ってます。彼はこれを歌詞として表現してないけど、俯いているだけじゃ絶対に Changeはやってこないから

SamはDeep-Soulの始祖です。そしてA Change the Gonna Comeは彼の最高傑作でしょう。明るく優しく輝く彼の核がこの曲という事実。あの頃、そんな人はいないと思って、自分がやっていることは仕方の無い事だと決め付けてた。直す機会は何度もあったのに、その覚悟が無かった。だから、23歳で再び同じ状況になって、トコトン聴きこむ羽目になる。


どれだけHeavyな状況を潜り抜けていても、その経験をプラスとして周囲に渡して初めて価値がある。
Heavyから普通の状態になれただけで、確かに素晴らしい。そこまで良く頑張ったと思う。
けど、本当に正しい道を目指すなら、そこから周囲にプラスを渡せる地点までは最低限歩く必要がある。
そこまで来て、初めて周囲からちゃんと認めてもらえる。

そこまで歩く覚悟も無かったくせに、あの時点で周囲から正しく評価されてないと決め付け、
その結果として僕はあれだけ周囲にマイナスをしていた。


あの頃の自分と同じような状態に陥っている人は、Sam Cookeを聴き込んで欲しいと思ってます。真の強さも真の優しさも恋愛の中だけじゃ生まれない。二人の間だけを考えていると、お互いが好きであればある程、愚かさに愚かさが積み重なる。Sam Cookeのように周囲の全てに配慮して、最終的には社会までを見据える視線。そこまでを目指してこそ、やっと目の前の相手に正しい形になる。ねじれた空間を言い訳にする暇があったら、その空間自体を背負えるようにならないと。その手前で調子に乗って、いつもそれを言い訳のネタに使っていると、結局は同じ状態になってしまうから。



[2001年にHPの入口に書きました」

Samの歌う「I'm Crazy in Love」はめちゃくちゃイイです。最高。今まで色々なCrazyという言葉を聴いてきたが、この言葉が1番優しいです。優しいCrazyなんて!! いやーー、これは欲しい。そのうちCrazy-Song特集でもやらなくちゃ。

Samの4枚組みがやっと届きました。凄いです。かなりお勧めです。やっぱり彼はすげー声の表情してます。ヘビロテにも追加しないと。もちろん別格扱いです。CupidやAnother Satuday Nightを聴くと、違う事が分る。今の歌手が歌うとエロエロになって、彼の持つ透明感が出ない。Samが歌うとホントに両親が安心できる(門限を守る)Another Saturday Nightになるのが不思議w

その中でもDisk4は怖い。素直に聴いてて、危険信号がなった。ビビって見たら、"Nobady Konw the Touble I've Seen"というタイトル。怖いです、これは1番怖いです。やっぱり彼が背負っているのは滅茶苦茶なものだというのを感じる。この曲だけはSamの闇が見え隠れする気がします。




7月の中旬に買ってからそろそろ4ヶ月。やっとSamのDVDを見ました。以前に、Live盤を買って分からなくて、かなり落ち込んだので、、、今回はずっと伸ばし伸ばしになってたんだけど。アレサもインタビューで登場するけど、
「サムが私の部屋に来て、、パパに見つかりそうになって」とかホント少女のような笑顔で喋ってるのが印象的だったです。歌ってる途中でウインクしたりとかなり楽しめました。モハメド・アリと知り合いだったのは知っていたけど、あんなに仲良しだったのね。一つの歌を通して流す映像は無かったのですが、ホントにお勧めなDVDでした。これでLive盤も聴きこめるというもの。そもそもR&BもSony Music TVからハマったんだから、SoulもDVDから見ていけばすんなり来るもんだなぁと実感。DVDの最後もKeep on Movin'で締めていたけど、この曲が2番目に好きです。その場からどうしても動けない時にホント癒されるから。一緒に鼻歌するだけで、元気が沸いてくるよ。Cupidとかはカバーされてるけど、この曲はカバーされてないのかな??



以前にSam Cookeを流していたら、「アメリカの懐メロやねぇ」と兄貴が言ったが、一般的にそんな印象になるとはよく思う。Live盤はそのイメージを破る内容だけど、UPの曲のノリは時代性も大きいから。ハマってみると、しゃがれ声で始まって、随所で吼えてるアルバムになっていると思います。このノリに腰が動くようになれば、Samの違った一面の虜になること間違い無し。個人的にはメドレーに惹かれたです。


Weekly Commentから抜粋
[2004/12]

Curtisの所で、「距離の固定された視線が生み出すストーリ」とか「感情のブレがなくて、あくまで一定」と書いたけど、ネガティブには思ってない。歌手でなく知り合いや恋人でもそうでしょう。ブレ幅が少ない方が安定感があるし、感動し易いような熱い魂?の方が一緒にいて楽しいかもしれないしさ。どちらがいいかの世界じゃない。感情のブレ幅が少ない歌手は、その人なりのポジションを共有すれば全作を問題なく聴けるけど、ブレ幅が大きい歌手なら、「こんなに叫んでるのか。。」と次の作品が全く聴き込めない時もあるだろうし、それぞれに利点欠点があると思う。

ただ、Sam Cookeはかなりブレないと昔から思ってた。だって、メランコリックなsummertimeと明るいCupidの差を見れば一目瞭然じゃん。いつだって、あのハニー・ブラウンな笑顔がある。だから彼の伝記を読んでて、「奥さんと別れた時でも涙を見せなかった」って記述を見て、だろうなぁ、、、って思ってた。本HPが、ブレ幅が大きいと思う歌手ってのは、絶対に一度は別れて泣いてると思ってる訳で。けど、そんなSamの歌でもCrazy she calls meはかなり求めてる感覚がある。I Belong to Your Heartには切なさを感じるし、Nothing Can Change to This Loveはタイトル通りの別れない意思を感じる。で、一番泣き顔に近いのが、Little Things You Do。歌詞が無いのでフェーズが分らないが、別れの痛みをLittle Thingsと抑え込んでる感覚は受けない。それよりも、相手のしたことをLittle Things言う点に、イイ男になるための必須事項を感じてる
she did little things, i did heavy return.

 そういえば、SamとJBはお互い絶対に相手のようにはなれないし、自分自身の道があると思っていても、結構意識してたんだなぁ、、とあの本を読んでて微笑んでた。
  
[2011/12]

2001年に書いた文章は、Samの伝記を読む前だったから間違いが多かった。書き直す必要性は分かっていたけど、書き直すならばここまで書く事になるし、そこにとまどっているうちに6年以上が経過してしまった。。10年経って振り返ると、やっぱり卒業→社会人の直前にSamCookeを聴きこんでいたのは本当に良かったね。苦しい顔をいつまでもしてても仕方無い。そもそも自分自身の問題が原因であって、幼年時代を持ち出すのは言い訳でしかない。そんな態度で過ごしてきた結果は目の前に明確にあったから。そこからもう一度自分を治していく勇気、前を向いて歩み始める勇気。A Changes Gonna ComeとKeep Movin' Onを聴きんで、DVDであのハニーブラウンな笑顔を見ていると自然とそんな気持ちになれた。

学生時代に聴きこんでいたR.やMy Lifeも大事だけど、あれは「底で逃げない」ためであって、前に歩くには「歩くに相応しい曲」を聴き込む必要があると思う。新人の頃、とことんギャグ路線で作ったパワポがプレゼンコンテストで同期300人中1位になれたのも、やっぱり1-3月にSam Cookeを聴きこんでいたおかげだと素直に思う。

もちろん社会人になっても色々と愚かだったし、だからEddie You Should Know BetterやAnna's Songを聴きこんだりしてた。HPを読めばそちらの印象の方が強いと思うけど、底で逃げないために聴く曲と、前に歩くために聴く曲は個人的に違う。そんな意味では、10年経って振り返って痛感するのが、このSam CookeとIsley meets Bacharachです。

だから結婚式で一曲はSamの歌を流したかった。色々と悩んだけど、I Wish You Loveを閉会後の皆様が帰る時に流すことにした。この懐メロの余韻がお勧めです♪

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