MaryJ.Blige
"Mary"
重なる2つのNever
[2002/03/03]

MaryJ.の現時点での最高傑作は確かに4作目の[Mary]だと思う。このアルバムはジャケットがパーフェクトな点も凄い。表も裏も中もすべてパーフェクト。これ以上のジャケットは見た事が無い。「MaryJ.は美人か」と聞かれると困る。写りの差が激しい人なんだよね。彫りが深いからかな?彼女が気を抜くとどうし様もない表情になるけど、気合が入るとホントすごい写りになる。で、このジャケットはMaryJ.の美人さが伺えるショットばっかりです。K-ciはより後悔してそうだよ。

部屋にポスターを飾る趣味はないが、このジャケットなら飾ってイイ。7:TimeのページのUPの写真もいいしね。10:Not Lookinのページの俯いたショットが全てのショットの中で最高かな?積み重なった深みと閉じた瞳から浮かぶ強さがある。女性は部屋に飾っておくだけで強くなれると思う。最後の見開きのショットは本人もかなり自信があるのだろう。それだけのショットです。このレベルの表情の一つでも見せられた日にはマジモン本気モードになるのが正しい男というもの。


そんなこのアルバムはイイ曲が揃ってる。ローリン・ヒルが作った1:All that I Can Sayと、Soulの女王アレサとのデュエットである9:Don't waste your timeが一般的な最高曲かな? エルトン・ジョンのピアノの3:Deep Insideも、ジョージマイケルとのデュエットの6:Azも親しみ易くてナイス。特にこの曲でのジョージマイケルの歌いっぷりはナイス。彼のMAXが出てるんじゃないかな?MaryJ.とデュエットすると軽い男性でもマシになる。さすが女王。


けど、自分はずっとこのアルバムを別の視線で見てきた。どうしてもそう見えたから。このアルバムの発売が夏で、その年の6月頃にMaryJ.の1番Deepな2作目[My Life]が分ってきたからかな? あの頃はいつもバックコーラスに参加してたもんなぁ。だから、このアルバムを聴いてもそこまでガツンと来なかったんだよね。

MaryJ.が歌わなくちゃいけない必然性を感じなかったから。
Soulの女王ってのは、彼女しか歌えない曲があり、彼女が歌うべき曲があると思う。もちろん初代女王のアレサと歌ったDon't waste your timeはイイ曲です。Soulの女王を受け継ぐ見事な曲だとは思う。けど、「アホな男に構ってて、貴方の時間を無駄にすべきじゃないわ」って言葉を受け入れるってのは、「私は今まで無駄にしてた」ってのを受け入れる必要がある。それってかなり大きな勇気だと思うな。いくらMaryJ.とアレサフランクリンから聞かされたとしても・・・二人から聞かされるからこそ辛いし、逃げれない。

・・と、Soulの女王の二人に喧嘩を売るのはP2S2H2だけの気もするがしょうがない。彼女達は事実を歌ってる。間違いは何も無い。けど、本当の事実は誰にとっても辛い。もちろん正面から受け止めなくちゃ道は開けない。それを自力で100%見事にやれるMaryJ.は本当に凄い。マジモン凄い。だから彼女は普通の娘が弱い事を知らない気もしてしまう・・・皆がMaryJ.の様に力強く歩める訳じゃない。だから、MaryJ.は

貴方は今まで無駄にしてた。その事実を受け止めないと扉は開かない。
それは誰にとっても辛いこと。
けど、大丈夫。
それを受けとめればきっと道が開けるから。そしたらいつかあの事も無駄じゃなかった。いい意味もあった。
って思えるようになるから


ここまで歌う必要があると思う。じゃないと、この曲だけで救われる女性の数は限られてるから。簡潔に言えば、
この曲は事実だけがあって、優しさがない。歌を聴くのに勇気を必要とする。


とまあ、今までの本HPの記述を横に置いたことばっかり書いてるが、それ位にSam Cookeは衝撃的だった。良く分かったよ。本当の優しさが何かが。


本当の意味で自分が気に入ってる曲は8:Memoriesや12:No Happy Holdaysだった。だから今までずっと紹介できなかった。何よりも、何回聴いてもどう聴いても13:The Love I Never Hadが最高傑作だったから。そして、この曲には謎があった。突き詰める程に疑問が浮かんだ。そんな疑問を誰にも言えなかったけど、最近、MaryJ.が婚約発表をした、相手の名は決して明かさなかったというニュースを聞いて、追っかけてた。最初は新作の[No More Drama]を聴きまくってた。"Flying Away"とか聴くとK-ciじゃないとは何となく思ったが、確信は出来なかった。けど、このアルバム、この曲を聴いてやっと分った。今は確信してます。

この曲がMaryJ.Bligeの最高傑作で、彼女しか歌えない地平線
この曲には重なる2つのNeverが込められてる
この事実を認め、受け入れ、歌うMaryJ.はまさしくSoulの女王


MaryJ.とK-ciの事を追っかけてるR&Bファンは全員知ってる。MaryJ.はK-ciに死ぬ気で惚れてた。これ以上惚れる相手はこの先もいない。本気で異性に惚れると何が1番辛いかって、、、「終った」っていう事実じゃない。本当に辛いのは「この先の人生でれ以上はやってこない」っていう事実だよ。これは本当に痛い。痛いってレベルじゃない。本気で見詰めたら《絶望》といってもいいかもネ。だからこれが1つ目のNeverです。そしてもう一つのNeverは最後の部分なんだよね。

I Can't Lose the I Never Had Oh yeah yeah
掛けがえの無いこの愛を失うのはイヤなのよ

ずっと自分はこの相手をK-ciだと思ってた。けど、そう意味をとると最後の最後でおかしくなる。だから最後の最後で混乱してた。けど、違ったね。これは新しい男性に捧げた言葉なのだ

そりゃK-ciが「じゃあそいつの事を俺よりも好きなのかよ」って言ったらMaryJ.は泣くしかない。だってそれが有り得ないのは誰でも知ってるもん。こんなのはMaryJ.の側にいる男性だって分ってる。めちゃくちゃ辛い事実だと思うな、男にとって。全く、この人は男の鏡だよ。K-ciとの話だけでなくCaseとの隠し子の話もあるってのに、MaryJ.の隣にいるのは本当に尊敬すべき事だよ。だからこそ、MaryJ.にとっての2つ目のNeverなのだ。だからMaryJ.は名前を決して明かさないんじゃないかな。今はこの歌を聴き込む度に2つのNeverが見えてくる。


人にとって1番辛いのはNeverの認識です。
彼女はそれを2つ同時にやらなくちゃいけない。けど、ここまで見詰め切ったのだから、彼女はきっと幸せになれると思う。それを支えていくのがR&Bファンだよね。普通は1つ目のNeverも出来ない。そして死ぬ前に気付くと思う。そんなもんだよ、人生なんて。けど、MaryJ.は惚れ抜いてそして2つのNeverを背負ってる。確かに彼女はSoulの女王です。Soulの女王ってのはそれだけの果てにあるという事か・・・


you know, sometimes there come a time in your life when you love somethin' and have to let it go.
And even though you might feel there's still somethin' there, you have wake up and stop livin' in a dream
'cause it's over now. you gotta think about you
生きてれば、愛する人を諦めなくちゃいけない時もあるの。僅かな望みをつないでいても、目を覚まして現実を見据えなくちゃならないの。もう終ってしまったんだもの。もっと自分を大切にしなくちゃね。

この語りは深いです。自分が知ってる語りの中で1番深いです。「単にMaryJ.は好きな人との暮らしを夢見る1人の女性だった」のが痛い程伝わってくるや。

Everybady needs somebody to love
Oh everybody needs somebadoy, yeah
誰だって愛する相手が必要なの
Oh そうじゃなきゃ生きてけないのよ
さすが泉山真奈美女史。これは本当に名訳。泉山女史が歌詞を訳してくれるからこその日本盤だと実感してます。日本のR&Bリスナーは幸せだよね。


Jam&Lewisは最高のプロデューサだよ
それ位にこの曲は優しいから。彼らはUPテンポの曲で見るならば、90年代前半が最盛期だと思う。もちろん他にも凄いプロデューサーは何名もいる。けどJam&Lewisだけは別格です。彼らはアーティストの心が分ってる。本当に分ってる。だから、アーティストも彼らの前だけでは、率直に全開に歌う。素直に歌えば涙が出る時だってある。素直なMaryJ.はいつだって泣いてるよ。だって、この曲の最後は彼女の嗚咽で終るから。それを見る資格があるのはJam&Leiwsだけだよ。

プロデューサの業績はヒット曲の数じゃありません。どれだけアーティストのことを分っているか、どれだけ相応しい曲を提供できるかどうかです。その事を分っているのかなぁ・・・と今第一線にいるプロデューサー達に思う。Jam&Leiwsを受け継ぐプロデューサーはまだ現れてない。
終りに出来ない恋愛は失われる


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