Syleena Johnson
"Chapter 1: Love, Pain & Forgiveness"
《真珠》というべき作品
[2002/06/07]

このジャケット写真は女性の全身を写したジャケットの中でTOPだと思う。トータルとしてもMaryJ.の4thの次ぎにくると思う。それは買ったときから思ってた。特に髪の毛からつま先までを貫く意志と、愁いを含んだ表情は最高その点では、いつも何処かに隙ができてしまうMaryJ.よりも上だと思ってた。最初に聴いて気に入ったのはR Kellyとの2曲目とLiberty Cityとの3曲目だけで、あとは全く霧中の状態だった。それでも聴き込めたのは、それだけこのジャケットに惚れ込んでいたからだと思う。「見て感じるならば、聴き込めば分る」その積み重ねが本HPだから。

1曲目から不吉感ありまくりのIntroで、この時点で90%脱落してしまう気がする。そして2曲目が一気に底なんだよね。I don't love you enough to hate ya, But ya I love you too much to leave このフェーズは普通のアルバムの1番深い部分。それが2曲目に来るのがこのアルバムの恐ろしさ。誰だって、1度や2度はこの状態に陥って、先が見えなくなる。彼女はここから出発し、ガンガンに突き詰めてる。普通は大きく蛇行しながら、時の流れにまぶしていくのに・・・

何よりも1曲目でGod sent her the challenge that would change her lifeだから。神様がくださるのは試練であって、それのみでしかない事を明確に意識してる。救いというのは自身の中から勝ち取るモノでしかない。 久々に見たなぁ、この覚悟は。

ということで、本HPはお願いします。「MaryJ.を好きなら、ぜひこのアルバムを聴いて下さい」 このアルバムはそれだけの作品です。MaryJ.の方は恋愛をリアルタイムで知る事が出来たし、ヤケ酒ヤケ薬に陥った弱さも共感できる。けど、Syleenaの方はどこを見ても強靭なんだよね。

定められた道をわき目もふらず歩く如く
だから聴く側とすれば、より浸りにくいと思う。けど、深度も高みも同程度だと思う。
Sweet baby, Sweet baby, please have mercy on me
I've never loved anyone quite like this before First time you, First time me

4:Baby I'm so Confusedのこの詞で決まりでしょう。どことなく甘えと泣きを感じさせる声の表情がナイス。彼女の好き度合いに疑問がある人は、この曲をトコトン聴きましょう。

6曲目Everybody wants somethingはもう1段階の深みに滑り込む曲。4曲目を受けて、このフェーズというのが最高。ここで俯瞰する事が可能な人だけが、4曲目のフェーズから踏み込めます。汎化の方向性ながらも、シャウトのボルテージはどんどん上がる。本当はこの点が1番凄い。単に汎化したら、ありきたりの結論に行ってしまうだけです。「視線は俯瞰、感情は一点集中」 それだけが奥の扉を開かせる。

7曲目You Got Me Spinnin'も凄い。
I had my head on my shoulders
I had my feet on the ground
I had my spirit together yeah
Until you come aroud
滅茶苦茶だよ、この詞は。シンプル過ぎる詞だけど、だからこそ思いもしなかった。MaryJ.も凄いけど、ここでこういう切り取り方をするSyleenaも凄い。下の2行なら驚かないのが、上の2行は「布団の横で白装束で正座して一晩明かす」ような怖さがあると思う。

8曲目Hit on Meも圧巻
I made believe that it really didn't hurt me
Made believe that I only hurt myself
I believed you every time you said I'm sorry
Was too ashamed to tell someone I need help
この詞は凄い。相手に殴られてもこれだけ想ってる。そりゃ自分はこんな事したことは無いけど、それでもダイレクトに飛びこんでくる想いがある。もし、本当に同じフェーズを体験した女性は、この曲を聴くだけで救われると思う。

10曲目 He's Gonna do You Inも「こんな男がいるんだよなぁ」と思わせる曲だしね。率直に言えば、そこで代わりに見つけたwarm placeは本当にwarm placeなんだろうか・・・と思い始めないと、直らないのが男だとも思うけど。

11曲目You Ain't Rightからフェーズがアクティブになると思う。帰って来ない事を明確に怒ってるから。そして戻ってきた男と12曲目Ain't No Loveで遣り合ってる。

このアルバムの最深部が13曲目One Dayです。これまでの軌跡を描けないと下手な終り文句か捨て言葉になってしまうけど、ここでの彼女の言葉は真の裁きです。恋愛で相手にしたことは絶対に撥ね返ってくる。これだけは摂理かな。

14曲目の存在がアルバム全体を綺麗事に陥らせないと思う。どんな恋愛でも人間がするのだから、こういう面があると思う。簡単に言えば、MaryJ.とCaseとの間の話みたいなもんかもなぁ。2曲目でこっちに向かわれるとオイオイと思っちゃうが、ここまで来てのこの方向だと、分っていても体から動くモノがあるかもね。

15曲目があるべき形に戻ったのを伝えていて、彼女らしさも1番発揮されていると思う。まさしく、Love, Pain & Forgivenessだと思う。これが本当の答えだと思う。ということで、本作は当然ヘビロテAランクです。こんな作品を作って、絶対に売れないとも思う。だから、よっぽどのことが起らない限り、本作で終りの気もしてしまう。だけど、年が経つごとに評価は上がっていくと思う。それだけの輝きがある作品です。
なんと言ってもBrian McknightとMaryJ.を足したような手触りで、

男は琥珀、女は真珠
この作品を聴き込んで、そんな気がした。
1年以上遅れてしまって大変申し訳ありませんでした。やっとこの作品をご紹介できるようになりました。これだけ惹かれて、これだけ分らなかったのは久しぶりだったから、かなり嬉しいです。たまに取りだして轟沈を繰り返していたけれど、ある日、13曲目が最深部って感じれてた。それで一気に霧が晴れて、歌詞をみて追認したという感じです。

最初から歌詞をみればもうちょっと早く分ったと思うけど、自分の直観を見直すのが大切だと思うから。理屈で教えられるよりも、聴き込む中で啓示のように感じ取れる瞬間の方が幸せだし、頭から入ると余計言葉が浮かばなくなるから。その割りには理屈の多い文章で反省してます。。

貝が体内に入った異物を包み込むことで生まれるのが真珠。やっぱり彼女は最高です。
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