Marvin Gaye
"Here My Dear"
此処に俺の想いがある
[2002/11/04]

19の頃かな、そろそろ古い人も聴き始めようと思った。薦められた鈴木啓志氏の本を買って、最初に探したのがMarvin Gayeの"What's Going On"。たまたま中古屋で"What's Going On & Let's Get It On"の2ferを見つけて、すごく得した気分になりながら、ドキドキ気分で聴いてみた。けれど、全く何も分からなかったんだよね。だから「やっぱり古い人は合わない」と思って、また90'sの作品に向かっていった。

あの頃、R KellyのR.を聴き込んでいたのもあって、、どうしてもMarvinのスタイルが合わなかった。What's Going Onの良さはともかくとして、全体的にメロディアスで優しくて、切実感が乏しいと思ってた。だからMarvin Gayeの魅力が分かってきた頃には、それから2年は経過してた。

けど、あの頃にこの作品 "Here My Dear"に出会っていたら、きっと滅茶苦茶にハマったと思う。まだ"What's Going On"と"Let Get It On"と"I Want You"を聴いただけだけど、この"Here My Dear"が一番、個人的に叫んでると思う。

積み重ねられた情感の重さで、底が抜けたような曲
9曲目のAnna's Songはこんな感覚の曲。何度恋愛をしても必ず失敗するような、、そんなMarvin Gayeのどうしようもなさに満ち溢れている。自身の想いの全てをこの曲に託しているけど、きっと相手には伝わらなかったんじゃないかな・・・。あまりに全ての感情を出しすぎて、共有不可能性を抱え込んでいる。リスナーでさえそうなのだから、当事者ならなおさらだと思う。

もっと押さえるべきは押さえて、伸ばすべきは伸ばして、笑顔で向き合う努力をすべきなのに、相手のための場所を全て横に追いやってる印象。この曲を聴くと、事の顛末はどうであれ、そりゃAnnaさんを好きだったんだろうなぁ・・・と思った。けど、これを《好き》と解釈しようと思ったら、彼女はMarvin Gayeよりも大きい必要があるし、それはあり得なかったのだろう。だから、この曲を聴いても彼女は混乱するだけだと思う。歌詞の部分部分に目がいっちゃって、それらに喜怒哀楽して、全体としての意味が分からなくなると思う。

この曲は切実感や叫びに満ちているけど、究極的には「甘え」の気がした。どんな感情を歌っていても、それを丸ごと投げるのは、やっぱり一つの甘えだと思う。「君は、俺の甘えの形が分からないから、終わりなんだ」と言ってる気が、どことなくした。自身の想いを伝えていても、ここまで出した感情は終わりの理由でもあるようで・・・。《声の優しいアーティスト・コーナー》でも書いたけど、イイ女は男の方向性に対してキスできる。明らかにMarvinはそれを求めてると思う。この曲はMarvin GayeのBestに収録されることは絶対にないと思うけど、彼を深く表している曲だと思うし、このアルバムの重心だと思う。


6曲目の"Everybody Needs Love"はイイ曲です。時期的にどう重なるのか分からないけれど、こんな手触りの曲は、一つの恋愛の終わりにくるのだと思う。MaryJ.の"The Love I Never Had"もそうだったしね。あの曲でMaryJ.が一番伝えたいことはEverybody needs somebadyだしさ。一緒だよね。そんな意味では、K-ci's Songなんて曲はあり得ないだろうけど、もしあるなら聴いてみたい気がした。って、結婚したMaryJ.に今さらそこまでは求めないけど、K-ciにはMary's Songを歌って欲しい。それがケジメなんじゃないかと、フッと思った。


3曲目の"When did you stop loving me, When did I stop loving you"もお勧めの曲です。光に満ちてる。この曲のおかげで、アルバム全体として受け入れられる線に達してると思う。そんな意味でも、バランス感覚がすごい。偉大な歌手はこんな面もしっかりしてる必要があるのを実感しました。


今までの自分の印象として、MarvinGayeには包み込むベールが多すぎて、いくらそれが素晴らしくても、生の本人らしさが見えないと思ってた。けど、このアルバムで、一人の人間としての親近感を感じました。



もうちょっと色んな作品を聴きこめばちゃんとMarvin Gaye像を描けるようになると思う。そのときにはこのアルバムについてはコメントしなくていいのだろう。そんな気はする。けど、このアルバムを聴きこんでいるかどうかで、深みが変わる。そんなアルバムだと思った。
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[以前に入口に書きました]


いやーーそれにしてもこのMarvinのDVDはいいなぁ。動いてるよ!!(って当然だがw) いや、けど、ホントに凄いんだよ。ううーん、Here My DearのDVDとかあったら間違い無くスキな女性にプレゼントするのをお勧めです。そしたら女性は聴けないAnna's Songの意味もダイレクトに伝わると思うんだよなぁ。Marvinがどんな表情でAnna's Songを歌うか瞼に浮かぶ。このためにこそ、音楽を聴いてると思うときがあるや。



すみません、Anna's Songは同性でもキツイ。
連続リピートしてたら心が潰れそうになった。

Marvin Gayeの問題作の中の問題曲。そのまんま名前だしていいのかよぉと思うが、曲の途中でAnnaと叫ぶ所だけは救いを求めてると思う。けど、残りはR KellyのTP2-COMと同じで、奥底の自己肯定の気もしちゃうんだよなぁ。人生にも恋愛にもイイトコ取りが有り得ないなら、やっぱり駄作はパスだけど、問題作は聴かなくちゃって思う。けどなぁ。ホントにこの曲にアンナさんの道はあるのだろうか? 聴き込むほどに表情も含めて分からなくなってきた。あの叫ぶ瞬間だけっていうんじゃ、そりゃHeavy過ぎるよ・・・



中古屋で「MPG&That's the way lovis]と「Moods of Marivn Gaye & In the Groove]の2ferを二つ見つけて買ってきました。ちょうど隣にはレコードコレクターズ2003/10号でMarvinの特集をやってたのでそれも買ってきました。久しぶりに音楽系の本をかったけど、かなり読み応えあって楽しかったです。やっとMarvinについてまとまって知ることができました。ご存知の通り大して知らないくせにアホな事ばっかり書いてるHPですが、Hear My Dearの日本名が「離婚伝説」とは・・・絶句。こんなタイトルつけてイイのかよぉ・・・それに加えて、本にのってるジャケ写真じゃ「輪廻」と書いてる、、、輪廻ってあんた、輪廻だよ。それってアルバムタイトルとして有りなの??? 2曲目の最後で、ハレルヤって言ってるけど、そんな気分です。このハレルヤ、言葉に上手くできないけど、ある種の諦めに満ちていてなんか好き。そうそう[Midnight Love]は聴かなくちゃネ。今度、買出しで買ってきます。

え、じゃあ あんただったらどんなタイトルつけるかって? そりゃHear, My Dearなんだもん、「届かぬ想い-終わった形」でしょう。届かぬ想いって言うところがMarvinの肩もってるが。。

[2004/09/04]

Marvin GayeのHere My Dearを聴いてます。最初は「終わり」と思って、次に「届かぬ想い-終わった形」と感じたけど、違うね。Here My Dearと言ってるんだから、届かせようと思ってないよ。そのまんまの「此処に俺の想いがある」って言ってるのだろう。

そんなことばっかりやってるから上手く行かないんだよ、、、と思うけど、他人事には思えないなぁ・・・ 単に日本語に訳しただけなんてちょっと不満だが、これがベストというべきか。Here My Dearの一言は直しておきますね。



《誰も受け留める事の出来ない部分》
[2004/09/17]

いつからか自分は感動を求めてない。結局はTommy Simsの所に書いたように、同じ心の震えを共有出来ればイイと思う。嬉しくなるような曲を求めている訳でない。楽しくなるような曲を求めている訳じゃない。本当の所では自分のベースが厚くなるような曲を 求めていると思う。R&Bに求めるのはそれ位にウエイトの高い話なのだから。感動するかどうかは震えに対して逃げない時に初めて生まれるのであっ て、感動しようと思うと、低すぎる震えから逃げ出してしまうと思うから。パッとみて光が無いと、どん底に連れ込まれるだけだとみなしちゃうから。けど、たとえどん底だけであっても、歌っている限り、それはもう光なのだと思う。自分はそう信じているし、だからこそ、そんな世界に滑り込みたくなるのだから。

僕はずっとこう思いながら、曲を聴き込んでいた。
けど本作だけは別。聴き込むほどに心が潰れそうになった。それはAnna's Songの重さに尽きる。Here My Dearというタイトルの通り、「此処に俺の想いがある」と言っていて、「お前はそれを受け留めれなかった」と伝えてると思ったから。
これまでずっとBlack Musicを聴き込んでたのは、

どれだけDeepな曲でも、本人だけが悪いと思うことが無かった
どれだけ相手を傷つけていても、何処かに汲むべき何かがあった


そんなギリギリの一線が、、、そこに詰め込まれた「後悔」と「哀しみ」と「叫び」と「やるせなさ」がどうしようもなく好きだったから。けど、Anna's Songはやりすぎといってもいいレベル。だからこそ、日本語盤のタイトルが「離婚伝説」になったのだろう。このタイトルはやりすぎだが、Marvin Gaye本人のやりすぎさから見れば、ちょうどいいのかもしれない。他の写真じゃ、ジャケは「輪廻」になってる。このタイトルはやりすぎ以上だが、このアルバムを聴き込んだ後だと妙に納得してしまう面もある。

このアルバムだけは何度生まれ変わっても、必ず失敗するようなMarvin Gayeのに満ちてる。

けど、やっぱり自分は「歌っている限り、それはもう光だなのだと思う」っていう言葉を信じてる。そう思わないと生きていけない場所はあるし、それを支えに生きている人はいる。Marvin Gyeはそんな人だと思うし、だからこそ、此処にはもう1歩踏み込むべき想いがある。人が貶し、距離をとり、腫れ物に触れるように扱う曲ほど、これからも聴き込む。R KellyのWhen Woman's Fed Upもそう。真のアホ男が同じアホ男のために書いた曲は、確かに聴き込むほどに価値が生まれた。そもそも綺麗な曲を聴きたかったら、R&Bなんて聴いてない。


先日、Anna's Songに一番リンクするのがI Want Youと気づいてから、もう1歩行ける予感があった。だから、久々に座禅してトコトン聴いてた。R&B-Timeには書いてるけど、社会人になってからは殆どしてない。そりゃねぇ、明日も会社があるんだもん。一晩でトンネルを抜け切れなかったら、誰が次の日の責任を取ってくれるんだか。

そういえば、昔、自分がやってるのは「鶴の恩返し」みたいなもんだと思った事がある。本気で聴き込んでいる時に、どう相手に映るかは分からない。ある種の宗教的体験のように見えるのかな。とりあえず見ない方がいいとは思う。後先の事を考えずに、とことん叫び声に合わせているだけであって、それ以上の事を僅かにでも考えると出来なくなる種類の話だから。


その先で見えた事。

確かに、この部分をAnnaさんは受け留めれなかったのだろう。Here My Dearと言ってるのだし、あれだけ曲中で叫んでいるのだから。だから「お前はそれを受け留めれなかった」と言ってるとみなしていいのだろう。けど、あのAnnaという叫びに極限まで重ね合わせたら、

ああ、これはアンナさんに対して叫んでいる訳じゃないんだ・・・
って感じた。

バカだよね。どうしようもなくAnnaって言ってるのにね。なのに重ね合わせる程にそう感じた。もしこの曲−このアルバムが非難に満ちているのなら、二番目の妻のジャンさんは、その部分を受け留めた事になる。けど、I Want Youを聴いて浮かぶのはそんな面じゃない。この部分に対する彼自身の距離のとり方なのだから。


Marvin Gayeが極限で叫んだ部分は《誰も受け留める事の出来ない部分》なのだろう
それをAnna's Songの果てで本人も気づいたのだろう
その事実が辛すぎて、あれだけ叫んだのだ


きっと、あの瞬間だけ、彼はAnnaさんに手を差し伸べて欲しかったんじゃないかな。それが絶対にありえないと分かったからこそ・・・だから、Annnaさんに叫んでいるとも言えるし、叫んでいないとも言える。
Annaさんが体現しているのはこの世への希望であり、それはAnnaさんが裏切った訳ではないのだ。
それは最初から求むべき話ではなかったのだ。

それを完全に受け入れたからこそ、この曲が生まれたんじゃないかな。

此処を受け入れる瞬間に泣き叫び、Annaと吼えてしまうMarvin Gyeが好きです。誰も側に来れないどん底なのに、どうしようもなく親近感を覚えてる。この曲は、この世の真理を苦しみながら受け入れた結果であって、それは非難すべき話では無いと思う。どれだけ頑張っても、どれだけ全開にしても、絶対に伝わらない部分は存在する。そして、それは相手のせいじゃないんだ。

こんな単純なことも此処までやらないと分からないのが人っていう生き物なのだろうし、そんな彼の姿は、確かに自分を諭す。「相手が愛想尽かしてからじゃ手遅れなんだよ」と伝えるWhen Woman's Fed Upの数十倍は重いけど、聴き込むほどに価値がある。

それを気づいたら、真っ暗闇の中、ヘッドホンから流れる音楽はI Want Youの番になった。ずっとこの絶妙な距離感はMarvin Gayeの後ろめたさから生まれていると思ってた。けど、違ったね。

彼は怒っているのだ
自分自身の足元に対して怒っている。それが最終的な距離感を生んでる気がした。


一つの事実を受け入れるために、一つの大切な関係が終わる。というよりも、一つの大切な関係が終わる事で、やっと受け入れれる事があると言うべき話かな。だから、最近はなんかAnna's Songを鼻歌してます。Anna,Anna,Annaの部分を特に。誰もがカバーしない曲だけど、それこそが自分にとってのMarvinへの鎮魂。これだけ業を歌い切った曲だけが、本人以外の業も変える力を持つのだろう。それもこの世の真理の一つかもしれない。



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