Gordon Chambers
"Introducing..."
かなりの傑作ですが、昔は唯一不満な点があった。30歳からお勧めの作品
[2008/03]

才能のある裏方好きな本HPとしては、もちろん発売当初に買って聴いてました。内容もすごく気に入ってたけど、何故かずっとUPしなかった。その理由が自分でも分らなかったけど、久しぶりに聴いてやっと分った。彼のデビュー時期が遅かったのはしょうがないのだけど、その事について、デビュー時期が遅れた理由について正面から見詰めてない。そこがTommy Simsとの違いであって、唯一の不満なんだと。逆に曲作りの才能では同じくらいある。凄い誉め言葉だけど、ChambersはPOPS寄りの曲作りをするけど、Tommy Simsと同じぐらいの能力があると思う。(TommySimsはカントリー寄りかな)

曲作りの才能を判断する基準は色々あるけれど、個人的にはメロディーラインの奪胎をあげたい。音じゃなくてメロディーラインを拝借する上手さ。元のメロディーが良ければよいほど、発想が広がらないから。自作の曲をRemixであれほど変えるR Kellyの才能に通じるものがあると思うな。01:Touch You Thereからそう。Marvin GayeのI Want Youを参照してるけど、見事に変えてる。というよりも参照してることすら分らないほどに。まるでこの曲はI Want Youの第二章とでも言わんばかり。

こんな曲は始めて聴いた・・・
こういう形で参照できるなんて、ホントに驚愕です。03:Clippin' awayもそう。確か90年頃に流行った曲なんだよね。その曲を同じように驚く形で参照してる。

メロディーラインの引き継ぎ方が素晴らしい
メロディーラインを同じにするとか、真似るとかならあるのだけど、彼だけは引き継いでる。そうとしかいえない参照の仕方。03:の元歌の名前はもう忘れたけど、印象的なメロディーラインだったから聴けばすぐ思い出す。90,91年頃に洋楽を聴いていた人は全員知ってると思う。

04:My Imaginationも傑作。これはオリジナルだと思うけど、良い曲です。性格的には暗い面がなく、裏方が長かった割には昼に似合う明るい曲が多い。それもやっぱり誉めるべき点なんだろうね。個人的には明るさから暗さまで混ざってたTommy Simsのアルバムの方が好きだが、気軽に聴けるラインをKeepしてる本作も、やっぱり大事なのだろう。

07:My Valentineを聴いて、Chambersの限界を感じたんだよね。Carl Thomasに提供した曲を、自分自身でも改めて歌ってる。それ位に会心の作品なのだろう。けど、買った当初から限界を感じた。Carl Thomasのように遅咲きでメジャーになれる人とはやっぱり違う。何が違うって、【曲に込める想いの違い】というか、曲を歌うときの解釈の違いなのだろうけど、Carl Thomasが歌った時の方がSoulを感じる。

興味がある人は両者の曲を並べてリピートすれば違いが見えてくると思う。やっぱりCarl Thomasの方にSoulはある。
もちろんSoul自体にも色々な表現方法と解釈があるのだけど、その一つとして個人的には「行き場の無さ」をあげたい。Carl Thomasは成人男性の寂寥感を歌わせたらピカイチだったが、そこを突き詰めると「行き場の無さ」があって、それがSoulに繋がっていると思う。けど、Chambersの曲にはそれを感じないし、それ以外のSoulの表現も感じない。かなりキツイことを言っているけど、ここがデビューが遅れた理由を正面から見詰めてないと感じた理由に繋がる面でもあるし、これだけUPが遅れた理由にもなってる。

続く08:I'll Miss Your Mostの方が彼自身に似合ってると思う。それにこの曲はかなり良曲です。09:That's when You Fallもそう。04,08,09,10にChambers自身の志向性を感じる。それを一言で言えば、「昼に似合う爽やかさ」になるのかな。個人的にはKenny Lattimoeに近い。爽やかさを突き詰める感覚は無いけど、その分、大人の男性の落ち着きがある。だから、やっぱり二十代じゃないね。30代以降に似合うアルバムだと思う。僕も30になってやっと本作の良さが分ってきたのかもしれない。

だから買った当初と比べると、本作をもっともっと好きになってます。これだけの才能がありながら、メジャーな歌手になれなかった。その何かを見詰めてない面はある。けど、この聴きやすさは評価すべきなのだと思う。12:the only oneを聴くと余計にそう感じる。

若さがなくなるという事は、勢いがなくなるという事であり、女の子に対しても、思想に対しても、やっぱり志向性に対しても勢いがなくなる。もし若い頃からスポットライトが当たってたら、アルバムでの石島氏のコメントのように、Chambersはマクナイトに近い位置にいたのだと思う。けど、裏方を長く務め、やっとデビューにこぎつけたChambers。曲作りの才能を持ちながらもある種の怖さをもてなかったんだろうね。若い頃からいい人過ぎたのかもしれない。ある種のエゴの強さは、人生に正負両面をもたらすけれども、やっぱり歌手としては必要なのかもしれない。

そんな面が無かったChambersは、遅れたデビュー作でもあくまで明るい。そして大人の寛ぎがある。昔はそれが分らなく、若い頃にデビューした歌手の作品と比べてネガティブに思ってた。そんな態度が間違っていたという事にやっと気づきました。手触りとしてはマクナイトTENに近い。そんな作品です。


Amazonでは中古で4000円以上の値段がついているけど、30歳以上(もしくはこの志向性をもつ若い人)には5000円以上の価値があると思います。出来が良いからあまり中古屋に出回らないと思うので、見つけたら有無を言わさず買って下さい。この作品を中古で売っちゃった人は、昔の自分と同じなんだろうね。年齢的に見えないものがあるのはしょうがないけど、売るのまでは良くないよ(笑
本作の良さを痛感したので、2作目:Love Storiesも買いました。落ち着いたジャケの雰囲気と違ってMiddleがメインの作品になってます。曲のレベルが非常に高い。ミドルでこれだけ高いのも珍しい。明るいミドルを作れるプロデューサといえはサディークがトップだが、同じレベルの曲作りをしてる。確かにこれは傑作。今から1stが買えない人は、ぜひこの2作目を買いましょう。非常に出来の良い作品です。


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