After 7
"Reflactions"
銀食器のような内省感
[2003/11]

場所を忘れたからちゃんと引用できないけど、哲章さんが「Babyface系のアルバムの中で一番気に入ってる」と書いていらっしゃったので、3年前くらいに買いました。けど、一回聴いてアウト。棚にしまい込んでた。その後に何気なく後輩に貸したら、「俺の友達が凄く気に入ってましたよ、これ」って言われたので、一般ウケも高いのが分かった。けど、最近までずっと聴き込む気にはなれなかった。それはやっぱりReflacitonsという言葉の重さにつきる。内省系の単語の中ではこの言葉が一番重い。なのに、この形で切り取ったことに、あの頃はどうしても納得できなかったから。

"Half Crazy"という志向性で己の居場所を見つけたMusiqだけど、そう言うならばGlenn Lewisは"Half Reflactions"だろう。 窓に半分景色が映りこんだジャケが何よりの証左。本人自身は明確な言葉に出来てないけれど、間違い無く彼はこの志向性。次回作はこのまんまのタイトルをぶつけてくればかなり期待大です。もしくは中ジャケにあったように「水溜りに写り込んだ景色」かな。Street系を増やしてこの方向性で来てくれても感激モノ。けど、こんな事を言いながらも「人の歩みはそんなに早くない」とは思う。そんな想像のあっさり上を行くTyreseが別格なのであって。

で、"Reflactions"です。内省派って突き詰めれば、Bird ViewかReflactionのどちらかになるんじゃないかって思ってる。けど二人の関係性を俯瞰するようなポジションは滅多に出来る話じゃない。付き合ってる時は完全に無理だしね。終わった直後にStevieやマクナイトのレベルまで突き詰めて初めて辿りつける場所だから。だから普段の内省の基本はReflactionsになるのだと。そしたらやっぱりGlenn Lewisを越すような作品が最低ラインだった。

全てを無慈悲に等価に映し出す鏡
「くぐもって不明瞭な像しか写せない鏡にどんな意味があるんだよ」ってずっと思ってた。クリアに写せば絶対に早く直せると思ってた。そこに疑問の余地はみじんにもなかった。けど、やっぱり何かが足らなくて・・・。自分自身をとことん見つめる。それは間違ってない作業だけど、ある地点を越すと夏の遠景のように像が揺らぎ始めるんだよね。それを視線で固定しようとしたら、「合わせ鏡」の世界になっちゃう。その結果としてやってくるのは余計にいびつな形だった。

自身の問題なんてクリアに映し出すだけで直るほど単純な問題でなく、クリアに見詰める事と、直るのに要する時間の間に全く関係が無い。本作を買って3年かぁ、、、、やっとこのシンプルな事実が分かった。

Reflactionsというくせに不明瞭な鏡、そこに優しさがあるや・・・

感銘度数ではJoeのBetter Daysと同じかも。Babyface系の内省アルバムとして真っ先にオススメなのは本人の"the Days"なのはコンセンサスでしょう。けど、個人的にはBabyface本人すぎてあんまり薦めない作品。タイトルから子供が生まれた瞬間だしね。強力曲はかなりナイスだが、全体的にパーソナルな作りになってる。Az Yetも持ってるけど、あの作品は売れる色気が少ない気がする。まだMarc Nelsonのソロの方を薦めるかな。

だからこそ、このアルバムはかなり広範囲に届くと思う。
ジャケをみると内省的なのは良く分かるのだが、あんまり明るく無い。だからセールス的には伸びたのか分からない。けど、実際のアルバムはかなり明るい曲もある。特に3:"Save It UP"と4:"Damn Thing Called Love"です。Babyface系のUPといえばLAが出てくる身としては、かなり以外な曲。やっぱり内省的なアルバムであっても、ミドルの出来がよくないと傑作にはならないのを痛感した。

Joeの"Better Days"がかもしだす雰囲気がちょうどイイ感じと思う人は、本作も気に入ると思います。1:'Til You Do Me Rightを試聴した時点で傑作でしょう。コーラスワークがかなりいいんだよなぁ。ここまで来ると、哲章さんがおっしゃるのも「なるほどなぁ」って思う。After 7の作品としては"Taking' My Time"の方が有名なのかな。Very Bestも発売されいてるグループだけど、このアルバムは聴く価値があると思う。マクナイトよりもBabyfaceの内省感の方が好きっていう人は絶対にお勧めです。

個人的に一番諭されるのが7:"How Do You Tell The One"です。Geraldの"Closure"やAngieの"Mad Issues"並にくる。

結局さ、誰もが心の奥底では気づいているんだと思う。それを無いフリをする人と、そのままの状態で保ってる人がいる。今までは両者とも納得出来なかった。けど、保っている人は確かに周囲に優しいんだよネ。明確にする作業は色んな軋轢が生まれるし、明確になった分だけ生き難くなる。そこまで分かっていても、ずっと自分には無理だった。だけど、大事な所でこれらの名曲に出会ってきたからこそ、ここまでやってこれたんだなぁ、、、って痛感してます。

どれだけタイプが違っても、傑作は全ての人に傑作であって、
自分の側の聴く準備が出来たら、ちゃんと良さ伝わるもんなんだね

ジャケとタイトル通りの内省的なアルバム。明るい曲もあって、皆が聴けるラインを保ってる。なにより手触りが優しいんだよね。無理やり問題点を明らかにしようとしなく、そっと包んでくれるような感覚で。
そんなRefslactionは、使い込まれた銀食器が似合うと思う。

CD自体もそうなんだよね。銀色の水玉?をつけて反射率を落として鈍い色にしてる。このジャケの7の部分もそうだよね。そんな所にも本作の良さが出ていると思います。

[2010/11]

改めて本作を、そして"How Do You Tell The ONE"を聴きこんでいます。やっぱり本曲こそがアルバムの中の最高曲だね。この曲を聴きながらやっと気づいた。いつも原因を追求してたけど、その前にすべきことがあった。

問題点や原因を見詰める前に、まず行動を律する事

人の価値は「何をしたか?」であって、「何を知ってるか」では無い。どれだけ知っていようと、行動がオカシイ人はやっぱり人間としてもオカシイ。自分自身の行動を律する事が最低ラインで、その上を行ける人が問題点や原因を追究すればいい。その最低ラインが出来ないくせにその上を目指すから、いつも足元がぐらついて結果として失敗していたんだと。

この曲を聴くと、この穏やかなコーラスワークこそが、行動を律するのに必要だと感じる。マクナイトの1stに憧れてあのレベルを目指してきた僕は、基本が出来ないまま応用を目指して、そして結果としてアホを繰り返していた。以前はReflectionといいつつも、突き詰め度合いが中途半端な本作が生理的に嫌いだった。けど改めて聴くと、このラインこそが行動を律することを主眼に置いた内省なんだと、やっと分かった。

本作の最高傑作曲、How Do You Tell The Oneはこちら



HOME