Alicia Keys
"the diary of alicia keys"
強度は落ちてない
[2003/12/13]

このLatelyコーナーの一番最初はAlicia Keysの処女作なんだよね。新人だからFavに入れる事は無いけど、アルバムコーナーに収まりきらない作品だったから。こんなマイナー調な曲で全米No1が取れることにも驚いたし、グラミー受賞の量にも驚いた。本作は2年ぶりの2作目だけど、メディア露出が多いから、間髪入れずに2作目を出してきた印象の方が強い。PVの中では、こんなにぶってピアノ弾いてて大丈夫かよ・・・と思ってたけど、あっさりこちらの想像を越す作品。

CDショップで1曲目を試聴した時から、「ピアノを弾きながら新たな重心を探してる」と思ってた。そりゃこれだけメディアにもみくちゃにされたら、それでも揺らがない自己の重心を再定義しなくちゃいけない。その点でAliciaにはピアノがある。その音がドンドン重くなるも当然か・・・処女作の頃から、「この先何があろうともピアノだけは手放さない」という意志が見えてたから、2作目でそれが無くなるとは思わなかった。実際の所、ホントに見たいのは「取捨選択する勇気」なんだよね。自身の中の確固たる優先順位は軋轢を生む事が多い。それをハッキリさせるのも一苦労だし、ハッキリさせた後も苦労が待ってる。けど、それが無いと次に行けない事は、、、実は多いと思うから。

売れた作品、特に売れた処女作の次ほど、作るのが困難なのも無いと思う。前作で達成した全てもう一度狙うと間違い無く駄作になる。だからこそ、一番大事な事は「絶対に守るライン」だと思ってた。その点において、Aliciaが守りたかったのは「強度」なんじゃないかな。5:you don't know my nameからホントどんどん上がる。間奏が長く、ずっと喋ってる構成を見ていると、今でも作品のコントロール権は保っているんだね。それはピアノと同じ位に基本的なことなのかな。自由に作って結果が出せる間はそれで突き通せる。今回もそのラインは達成してる。前作のような多彩な表情が無くなって、ドンドン重く・暗くなったのは強度を守るためには、しょうがなかった事なのかも。

6:if i ain't got youとかホント今のAliciaの生の場所が出てる。寛ぎ感と痛みが交じり合って独特の曲になってる。ホントこのジャケのような木目調の曲です。このフリルを剥ぎ落とした声はかなり浸るに値する。7:diaryはfeat トニーズだけど、ちょっとびっくり。ドウェインのギターとの絡み具合は思った以上にナイス。若く才能のある女性に対して絶妙な距離感で接してるドウェインが印象的。

9:wake upを聴いてると、ここら辺の曲を持ってくるからこそ、次も続くんだよなぁ・・・って思う。どれだけがAlicia本人が担当し、どこまでを共同プロデューサが担当してるかは知らないけど、曲のレベルも落ちてない。見事なもんです。前作よりも吼えてるのも当然かもネ。10:so simpleもナイス。ホントアルバ後半に重心があって、ここら辺の曲に自由さがある。Aliciaのインスピレーションを妨げるものが無い環境が曲を通して伝わってくる。この曲での「OH」は本作で身につけた新たな表情。これなら3作目もかなり期待できる。 11:when you really love someoneが一番深い。本作の他の曲ではファットさを手に入れたがってるような吼え方をするAliciaだけど、この曲だけは削り込みを思わせる。けどね、ここでのYouって同世代かい?それがかなり疑問。

ちょっと前にも書いたけど、ピアノで半身隠れるこのジャケはナイスだと思う。だからこそ待ち望んでた。前作で出すぎた部分は抑えて、守るべきラインは守り、伸ばすべきところは伸ばしてる。そんな意味では傑作かもネ。中ジャケじゃいろんな髪型・カッコウをしてるけど、確かにこれぐらいの美人顔になったらなんでもよく似合うよ。もちろん?DVD付を買ってしまいました。映像でみると思った以上に腰周りがあってびっくり。ブリトニーもそうだけど、やっぱりあちらの女性は全員、回し蹴りで丸太を折れるぐらいなのかな?とか適当な事を思ったりしてる今日このごろですw


たまに「自分が女性だったらこの曲を聴き込む」って書くけど、「自分は男性だからこの曲を聴き込む」とはあんまり書かないかもw そりゃねぇ、ライバル増やしてもしょうがないジャン、と思っている訳じゃないけど、なんで書かないのかなぁ、、、多分、余計に説明不可能だからと思う。例えば本作。処女作と同じ位に聴くべき作品なのは間違い無い。そして難解さはこちらの方が遥かに上です。そもそもさ、同年代の女性はAliciaを聴きこんでいるのかな???ってたまに思う。多感で激しくかつそれを抑えきれる女子中学生に一番似合うアルバムだとは思う。Tyreseが同年代どうこうじゃないように、Aliciaもそちらの方を歩き始めてる。

で、11:when you really love someoneです。ホントの所、一番知りたかったのは処女作の重心:woman's worthに連なる曲。それはやっぱり本曲だと思う。そして、アリシアが"I'm a woman"と始まる曲は、いつだって世代を俯瞰する視線が見える。


たまに思う。昔は美人に生まれたって権力者の慰み者なるのが相場だったんじゃないかって。小学生の頃、「日本の民話・昔話」を全都道府県分(45冊??) 読んだ。その中の2割は美人な奥さんが権力者に連れてかれる話しだった。時代は下って現代だけど、自らが苦労して手に入れたもの以外でチヤホヤされても、本人の魅力は余計に伸びないと思うのだが。そんな意味では、Aliciaは美人さと幸せの関係について思索を始めてる気がする。その始まりだけが見える曲で、結論も何も無い。ただ彼女の視線は世代を超えた俯瞰から始めてる。この曲に自らが傷ついた果てのアドバイスは無いと感じる。

逆に、5:You don't know my nameは特定の男が浮かんでこない。同じ店に格好を変えて行ったら相手の男は気づかなかった。そんな情景は浮かんでくるのだけど、Aliciaは間違い無く相手の男の瞳を見詰めてない。駆け上った女性アーティストはよく、「本当の私は伝わってない」って曲を作るけど、そこに納めるのが一番適切だと感じる。

だからこそ、6:if i ain't got youになるんだけど、これは完全に終わった話じゃん。振り返って痛みを思い返してる。そんな意味では、処女作から2年たったけど、恋愛曲はどれもこれもホントの意味で惹かれている訳じゃない。Tyreseの2作目に納められたwhat am i gonna doには遠いな。Aliciaは私生活を隠しているというよりも、あまりアーティスト同士の恋愛に興味が無い気もするけど、どうなんだろう。ジャネットを見ていると、私生活を見せないようにする方が擦れないとは感じる。

ということで、やっぱり書いてみたらハチャメチャになった。ごめんネ。


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