MaryJ.Blige
"My Life"
泥沼な恋愛の道標
[2001/11/29]

もちろんMaryJ.はSoulの女王。そして、彼女の2作目である"My-Life"が90年代のR&Bのアルバムとしても最重要の位置付けを得ているのもコンセンサスになっていると思う。彼女の作品としてはセルフタイトルでもある4作目の"Mary"の方が輝いてる。けどSoulの女王にまでなったのは、このアルバムが歌う世界をくぐり抜けたからだと思う。そんな意味で、やはりこのアルバムは現在進行形の深さがある。

このアルバムを聴き込んで見えてくるのは、暗闇の世界。普通に流すには重すぎるアルバムだけれども、これこそがMaryJ.の歩みを表していると思う。というよりも、それ以降のアルバムは伝達する為であって、突き詰めた訳じゃないと思うから。このアルバムの凄い点の一つがバックコーラスとの関係。MaryJ.的とも形容されるようになった女性バックコーラスで厚くする手法だが、このアルバムでは、彼女達がまさくしMaryJ.を女王としてみなしているのが印象的。

だから、やっぱりこのアルバムでMaryJ.はSoulの女王になったのだと思う。非凡なボーカリゼーションを持たないMaryJ.は、たまに「バックコーラスに歌わせた方がマシ」と揶揄される事もあるが、このアルバムが進むにつれて、そのバックコーラスの態度が変化していくのは聴いてて楽しい点。最初のうちは、バックコーラスも大してMaryJ.を認めてないと思っちゃう。けど、曲が進むにつれて「MaryJ.を支えなくちゃ」という表情に変わる。そして最後はMaryJ.が前人未踏の世界を切り開いてるのを認めて、かしづいているようにさえ思えてくるや。

7:My LifeからMaryJ.のボーカルが伸びる。ドンドン上手くなっている。それは出すべき感情がボーカル能力を押し広げてるようにも思える。8:You Gotta Beliveから明らかにバックコーラスの表情が変わる。MaryJ.を支え始めてる。特に曲の途中でK-ciのMaryMaryという声が入った後のMaryJ.のボーカルの伸びは凄い。この時点でバックコーラスの女性が全員従う気になったかのようだね。

9:I Never wanna,,,は待つのに疲れ切った様な、芸も糞もないMaryJ.のアドリブが印象的。上手さも、ヒネリもへったくれも無いのにリアルだけがある。有無を言わせない力があって、この時点で、彼女は最強の声の表情を手に入れたと思う。何よりも、絞りだす声というよりも、どうしようもなく漏れるうめき声だからたまらない。バックコーラスがそのMaryJ.をしっかり支えているから、MaryJ.はその上で自由に悲しみを表現できてるね。独りで歌う10:I'm Going DownもMaryJ.のボーカルが光るしさ。ホント、どんどん伸びてるなァ、、、

特に11のインタルードが別格だと思いマス。
Oh oh oh oh oh Oh baby Oh oh thank you thank you
Oh this is my life (this is my life) You are my life (you are my life)
You are my life And I thank you (I wanna thank you)
Oh I thank you (I wanna thank you) I thank you for that
For blessing me
このblessing meという時点で女王だよ。このフレーズの瞬間にくぐり抜けたと思うな。だから、MaryJ.とバックコーラス達は11:Be With Youから衣装が変わる。頭に描くと、どうしても上のジャケットのような格好から変わると思う。うずくまって聴いてる自分も、このフレーズから背骨が直立するから。自分はそこまで信じてる神様は無い。けど、この瞬間のMaryJ.は信じることが出来る。このアルバムじゃないと救われない位の恋愛をするのはあまり進めれない。けど今の自分はこのアルバムに救われてるや。


今までは「有名だからとか、自分のR&B的解釈力を試したかった」という不純な動機で聴いてたが、今は純粋に追っかけてて良かったと思う。For Blessing MeでMaryJ.の姿を思い浮かべると、自分がR&Bを聴き始めた頃まで戻れる気もする。あの頃から、R&Bを聴く事は自分の視線を上に向けてくれたから。



いつか自身を襲うブーメラン
本人が本気で好きであればある程、相手の適当さによって、自己の尊厳が傷つけられると思う。って尊厳なんて難しい言葉だけど、「自身の無意味さと無価値さを痛感させられる」と言えばいいのかな。だから、ここに陥らない為に普通は「あんな男を好きになるんじゃなかった」と思う事が多いと思う。相手の悪い点を軽く10個並べれば、それだけ理由付は出来るしね。

けど、「それでも好き」と思っちゃう時は、一生にそんなに多くは無いんだけど、やっぱりあるんだよなぁ、、、相手のどうしようもなさに惚れちゃう時が。そのどうしようもなさが生まれた理由まで踏み込んじゃうと、もう並大抵の事じゃ抜けれないね。どれだけ周囲が忠告してくれても。私には分ってると思っちゃう。

だからこそ、この状態でこの台詞を言っても、結局自身に跳ね返ってくると思う。「あんな男にさえ振り向いてもらえなかった」という事実として。まあ、そこまで好きじゃなくても、結局は自身に撥ね返ってくると思うし、だからこそ、その前に気持ちが冷めるのを望むと。人は周囲にそんなブーメランが飛び交ってる存在なのだ。ってこんな事言うと変人扱いされそうだけど、自分はどうしても一つのイメージ像として思うなぁ、、、


私は貴方と幸せな家庭を築きたいし、その為に悪い点を直すから
この台詞を言い切った瞬間に力を得てるんだよなぁ、、、MaryJ.は。ずっと自分は「好き」という気持ちで力を得てると思ってたし、「K-ciはホントにそこまでの男かなぁ、、」と密かに思ってたけど、違ったね。このどん底で自身を見詰め直していくと言った瞬間に力が生まれる(らしい)。かなり信じられないが、結果としてそうなってる。


相手が散々外で遊び歩いてる時に自身を見詰めたら、誰でもPickin' me apartなのにね。
そんなのStevie WonderのLatelyでも、R KellyのWhen Womans Fed Upでも歌ってるのにね。「お前が外に行ってる時に、鏡で自分を見詰めると、バラバラになりそうだ」ってさ。なのに、それでも、「そこから1歩1歩、歩いていく」と言い切った瞬間に力が生まれてる。やっぱりそれがこの世の事実なのか。pickin me apartの恐怖を乗り越えて見詰めた瞬間に扉が開くのか。


イメージ的に述べると(って本HPはそれしかないですw)皆が南の楽園でいちゃついてるのに、MaryJ.はマリアナ海溝の1番底にいる。けど、底に辿りついた事で、地下からのマグマが流れこんでるようなんだよなぁ、、、うーん小学生でもしないようなイメージだけど、これが1番実感に近い。どうせ地球からみたらミカンの皮よりも薄いのだから、人間はその上のゴマ粒以下なのだから、人が想定するどん底なんて、そんなものなのかなぁ、、、

結局、彼女は「見詰めて直していく」という一言で尊厳を保ちえたし、それがSoulの女王に結びついてると。だから、他のページでは「勝ち」とか適当書いてるけど、実際としては恋愛に勝ち負けは無いと思う。まあもちろんK-ciは戻りたがっているんだから、長いスパン見れば勝ちかもしれないし、そこら辺は「相手が後悔する程の女性になる」という決意に近いかもね。もちろん、今の二人は戻れてないんだから、その点からいえば両者負けかもしれないしね。

MaryJ.のすごい所は、あくまで「二人の為に見詰め直していく」というスタンスなんだよなぁ、、、上の台詞ぐらいなら一定数は言えると思うし、自分もそんなタイプではあるが、やっぱりMake a Happy Homeという言葉は重い。



男性陣は色々いう。確かに答えの形としてはこちらの方が明確になってる。それに比べて、このアルバムは、何かの答えを示している訳じゃない。彼女の歩みがあるだけだから。けど、答えを聴いても、「あ、そう」で終わっちゃう。「自分もそう思えたらいいよ」とか。

けど、このアルバムを聴きこめば、きっと体感できると思うな。そして言い切る力が生まれると思う。そんな点で、自分もゼロから歩き直しです。あのK-ciを待ってるMaryJ.のレベルは程遠いや。


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