村上春樹
[2005/02]

色々と本は読んでいるけど、恋愛小説は読んでない。読んでも実感が湧かないから。けど、村上春樹の小説は全部読んだ。"海辺のカフカ"だけは読んでない。この先の彼の小説は読まないかもしれない。けど、2000年までに発売されたエッセイから旅行記から殆ど読んだと思う。ところが、自分は彼の本を一冊も持ってない。全部兄貴が持ってる。大学時代に文庫本で何冊か買い直したけど、引っ越した時に荷物が重くて手放した。。だから、今改めて村上春樹について書こうと思っても読み返す術が無いのだが。


初めて村上春樹を読んだ時は覚えてる。中学生の頃だ。あの頃はよくラジオを聞いてたけど、そこにゲストで小泉今日子が登場して、「昔はああいうタイプは主流にならなかったけど、今は彼が主流になっている」ってな文脈で村上春樹を誉めてた。その当時から兄貴が入れ込んでいるのは知ってから、そのまま向こうの部屋に行って、「そういう訳で、なんか貸して」って頼んだ。その時、「まあ色々あるけど、まずは"羊をめぐる冒険"→"ダンスダンスダンス"っていう流れがいいんじゃないかな」って、兄貴の言われるままに読み始めた。結局、その後、その当時に発売されてた彼の作品の全部を読んだと思う。兄貴は全部集めてたから。

高校一年の頃、読書LTっていう行事があった。冬休みに本を一冊読んできて、皆で議論する。うちの高校はそんな行事が伝統としてあった。で、本の選定が行われたけど、あんまり意見が出なかった。だから、僕が村上春樹の"ノルウェイの森"を推薦した。発売当初にどれだけ売れたのかはあんまり知らなかったけど、やっぱり青春小説だしさ。なんで"風の歌を聴け"とかじゃくて、ノルウェイの森を推薦したのかは自分でもよく分らない。その本に決まった後も、「うちのクラスだけは上下二冊ある」って小言を言われたなぁ。

高1の冬休みはBoyzIIMenのクリスマスアルバムが発売されたから、よく聴いてた。で、推薦したんだし、改めて読み直す気分になった。その時、謎が氷解したんだよね。

あの小説の核になっているのは、キスギ君と直子さんがSEXが出来なかったこと。けど、主人公のハジメ君とは何故かできた事。それに関する直子さんの混乱。 それが重低音となってストーリーを引っ張ってる。その時、高1だった俺は、何故か「ああ、幼馴染としてずっと一緒に育ったからこそ、二人はSEXできなかったんだ。SEXってのは他人とじゃないとできないんだ」って分ったんだよね。それまでは、あの小説の情景が好きだっただけであって、それ以上は読み込めてなかった。

年が明けて、読書LTになっても、あんまり議論が活発にならなくて、僕が30分以上、これについて喋ってた。黒板にも絵を書いた(どんな絵を描いたんだ??)気がする。だからだね。「あいつは激変わってる」っていう位置づけになったのも(イヤ、その前からなってたかな?

その後で、女の娘から「主人公は出てくる女性の全員とHしてるよ。若井クンってHだね」って言われた。その言葉を言う君の顔の方がHだと思ったけど、誰から言われたか、もう忘却の彼方だなぁ。けど、女性はたまにそういう種類の表情をする。あれを見るたびに、究極的には女性の方がHな気がするが、、まあいい。


高校2年の時に、"ねじまき鳥クロニクル"の1,2冊目が発売された。ちょうどR Kellyの12Playが発売された頃で、なんか流しながら読んでた。読んだ人は知ってると思うけど、奥さんが去っていった主人公の話だし、読んだ当初は短編に収められていた「ねじまき鳥と火曜日の女」(厳密にはタイトル覚えてない、、 と展開が同じだぁと思っていたけど、そんな主人公と12Playが妙にマッチしてて、だからあんまりエロい歌だとはあの当初から思ってなかった。それ以来、小説と音楽の組み合わせを探したけど、あの時ほどピッタシきたのは無いなぁ。

兄貴はあの頃、しきりに「俺は"風の歌を聴け"や"1973年のピンボール"の頃が好きだったんだけどなぁ」ってぼやいてた。個人的にはあそこら辺のビール飲んでバカやってっていう情景にはあこがれなかった。ねじまき鳥クロニクルでの空井戸に降りていく主人公の方が親近感を持ってた。そんな意味では兄弟でも見てる部分は違うね。「午後の最後の芝生」はずっと気になってたけど、あれが一番だと思ったのは大学に入ってからだ。何回か恋愛しないと、あの女性の手紙の凄さは分らないと思う。


ある作家の本を全部読むと、なんとなくだけど見えてくるものがある。作家の実体験と作品との距離が少しずつ分ってくる。もちろん主人公は作家自身では無いのだけど、やっぱりある種の連関はあるから。そんな意味では、村上春樹の奥さんは、ノルウェイの森でいうミドリさんなんだろうなぁ、、、とはずっと思ってた。けど、エッセイ読んでもずっと子供の記述が無いので、お子さんはいないのかな???っていつも思う。そこら辺の理由は本人のプライバシーに属するが、ちょっと興味があるのは確か。

宝島かなんかで村上春樹の謎解き本みたいなのが出た事があるけど、あんまり興味なかった。"国境の西、太陽の南"はタイトルとしては惹かれるが、そこまで個人的には来なかったから。ただ、短編だったけ? 元水泳選手が、人生をターンに分けて捉えている場面が出てきて、そこは凄く印象に残っている。「どんなに長い距離であっても、50メートルの往復として定義できて、ターンごとに分けていけばいい」ってな思想を持って生きてる主人公で、なんか凄く参考になった。

あと、"世界の終わりとハードボイルドワンダーランド"での図書館に勤める女性との話とか。やっぱり本好きな男は、図書館に勤める女性には弱いと思う。個人的にも、保母さん・看護婦さんよりも惹かれるかな。あの本には太った女性との描写があって、あれを読むと、なんかいいかも・・・・って思った事はある。


何の本だったかなぁ、主人公がSEXについて女の子に聞かれてコメントしてた。「うーんとね、例えば飛びたいんだけど、なかなか飛べない鳥がいるとするだろ。天気が悪かったり、????、で、上手く行く時は空を飛べる。」 結構忘れてるなぁ。確かこんな感じで説明してた。それを後日、女性達が村上春樹の小説を批評してる本があって、その部分に対してベタ誉めしてるのを見た。SEXに関するたとえ話で、女性がベタ誉めするなら、イイ男ランキングかなり上位にくると思う。 あと、覚えているのは「春の野原に白熊と抱き合って転げまわっている」っていう喩え。やっぱり村上春樹は別格だ。けど、どっかのエッセイに、奥さんから「私にもそんな風にいちいち言わんでもいい」みたいに言われてるって書いてあった。それが夫婦ってもんなんだねw


最近、よく、ノルウェイの森の最初の部分を思い出す。飛行機から降りる時のこと。たまたま流れてきたノルウェイの森。昔の記憶。野原にある野井戸。そんな世界。 きっと僕は直子さんのような静かな壊れ方をしている女性に惹かれるのかもね。ピアノとレイコさん。地図が好きな○○(いかん名前忘れた・・  主人公が最初に住んだ寮。 

彼の人生において、親友は自殺しているのだろうか? 初めての女性との体験は?? そんなことが妙に気になる。なんでだろう? それはある種の感覚が似てるからか。歳はぜんぜん違うのにね。その他の事もかなり違うなぁ。 けど、言葉と感情の間にあるモノは似てると思う。僕にあったのでなく、幼い頃から読み込んできたから出来たのかもしれない。

そもそも主人公と自分自身の恋愛の形が正反対なんだけど。けど、もし自分が顔の作りが今と違ったら、恋愛の形も似てたのかもね。そんな気はする。村上春樹も自身の顔の作りについてエッセイで書いてた。若い頃はひげを剃るたびにイヤになったみたいな話だったような。それもあってか?、顔写真付きのインタビューは滅多に無い。Lathunとホンとそっくりだよ。

Deep親和性がある人と、Deepな人は違う。やっぱり村上春樹はDeep親和性がある人だしね。Jazzについての本を書いてるくらいに聴きこんでいるけど、Soulでは無いんだよね。確か、レイチャールズの曲がダンスダンスダンスで出てきたけど、それだけだった気がする。そんな意味では、R&BのDeepもエロさも彼とは縁が薄いのかも。Funkyな面もそうだね。

そんななんなで、なんかちゃんとまとまってない文章だけど、自分以上に村上春樹を読み込んでいる人はそんなにいないから、これ以上、深まる事もあまり無い。兄貴とここら辺をクリティカルに話す気は無いしさ。最近は村上春樹へ評論本も多いみたいだけど、失望するのがイヤで読む気が余り無い。

ただ、「村上春樹、河合隼雄に会いに行く」は結構楽しい対談集です。ロマンチック・ラブを長続きさせようと思ったら、性的関係を持ってはならないんですという言葉は深いと思う。ただ、その性的な関係にも一種の治癒作用はあるのですね。ところが、それはある時点から別の形の治癒作用に変わっていかなくちゃいけない・・・そこには井戸掘りが必要なのですか。 という流れで、あくまで村上春樹は井戸に拘ってる。彼は空井戸の感覚を幼年時代からずっと持ち続けているのかな。


で、もし村上春樹に興味を持った人がいたら、、、、二十歳前ならノルウェイの森をお勧め。25歳以上ならねじまき鳥クロニクルかな。それぞれ傑作だし、売れたしね。ダンス・ダンス・ダンスは羊をめぐる冒険を読まないと楽しめないし、羊をめぐる冒険は、鼠を通じて、風の歌を聴けまで読まないと関連性が分らないかも。それにダンスx3はバブルの頃の日本を知らないと、入れ込めないかもね。

午後の最後の芝生はこちら

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