Direction: モノトーンなアルバム
    
     Johnny Gill "let's get the mood right"
[2001/11]

20歳以下が聴くアルバムでは有りません。この色気もへったくれもない世界は取っ掛かりゼロだと思うから。まだ90年初頭の大ヒットの"My My My"を含む[Johnny Gill]の方がマシじゃないかな。それだけでなく、余裕を無くしてしまった30歳以降にも合わないと思うな。これ程までに完成された歌世界は全ての簡易な入口を拒否している。

Johnny Gillが激ウマのアーティストだからこそ、そして「Hip-Hip Soulは俺に無関係」という覚悟から生まれた作品だから。こんな作品を作った日には第一線から退場決定だよと思うけど、それでも歌った覚悟は味わうほどに世の喧騒から離れた世界へいざなってくれる。って、もちろん高層ビルからの夜景とかいう話じゃないよ。路地裏に降り立った歌天使という手触りの、、、もっと切なくて優しい情景です。だから「離れた」というよりも「寄り添った」の方が適切かもしれない。

何よりも、これだけ歌が上手いのに、鼻につく高貴さがないから。それよりも、自身の歌に賭けるどうしようもない想いを慈しんでいる視線が、ゆっくりと形を紡ぎながら浮かび上がってくるのがたまらない。


病室を抜け出して買いに行ったアルバムなんだよね、、、R&Bを聴き始めの頃に光り輝いていたJohnny Gillがモノトーンのアルバムをちょうど発売してたから、試聴もせずにそのまま買った。このアルバムも聴くと全ての色が抜け落ちたあの空間が浮かんできて、未だに色々混乱する。けれど、18の頃 このアルバムに出会えて同じモノトーンを共有できたことは自分の誇り。


黄昏と夜の間にあるモノトーンの時間帯に、部屋の全ての電気を消して聴くと、鬼のようにハマれる傑作アルバム。


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