Remy Shand
"the way i feel"
明るい内向性
[2002/06/18]

発売前からかなり話題になっていて、発売された後も好意的な批評が多かった彼。けど、個人的には何処かで違和感を感じてた。だからあまり手が伸びなかったけど、試聴したら最初の2曲はかなり良かった。彼が誰を目指して歩いていて、今までに何を手にしたか?がダイレクトで伝わってきたから。そして、やっと違和感の正体も分った。

R&Bとして受け入れて欲しいならどれだけ薄いサングラスでもOUT
ストレートに正面から向き合うべきであって、逃げ道を用意しないで欲しいから。ここまでの作品を作れるなら、彼はもっともっと行けると思う。いい作品を作って、かつ上手く線を引く。この作品だけで「ライトR&B」として、手ごろな入口として、広く受け入れられると思う。皆に薦めれるし、実際気に入って貰えると思う。だから、この先2枚は保証された気もする。今年のネオ・ソウルの男性ソロ新人の3名の中でも1番、売れる色気があるんじゃないかな。

だからこそ、イヤなんだよね。ある意味 適度に完成されすぎて、裂け目から伺える今後が無い。
R&Bの定義は年々曖昧になっていって、今はBlack-Popsと同義だと思う。それでイイという意見もあるかもしれないけど、自分は正反対の立場だな。「黒い憂鬱」を読んでよりその感を持ったから。その点から言えば、黒人はワールドカップでも活躍しているように、多岐に渡って活躍していると思う。けど、アフリカン・アメリカンの最終的な拠り所がゴスペルやSoulのような音楽であるということは、

今、なによりも再定義が求められている
と自分は思う。これだけの作品を作れるなら、処女作でそこにラインを引いて欲しくなかった。一曲位はギリギリの叫びが欲しかった。これだけの作品を作れる彼なら、墜落覚悟で本気でやれば、歴史に残るものが作れると思うから。多分、黒人自身が自己を見詰め切るのは不可能な気もする。そんなに人間は綺麗に出来てないよ。だからこそ、黒人音楽の再定義への作業を通して浮かびあがるものがアフリカ・アメリカン全体をネクストレベルに連れていくと・・・それはRemy Shandのような非黒人にしかできない作業なのだ。

顔は俯いて瞳は閉じず。両眼の真ん中に意味を集中させて歌うようなGlenn Lewis
顔は上向きで瞳は閉じる。おでこに意味を広げるように歌うRemy Shand

両者とも見事に持ち味を発揮させてると思う。それ位にアーティストのHPで見たビデオクリップは良かった。2種類ある内向性をそれぞれ完全に自身のものとしている。大したもんです。"Take a Message"は中盤の山場だね、ホント。どっちかというとGlenn派の自分としては、あの歌う表情に憧れを感じたなぁ。

ということで、巷でいうようにMaxwellと似ている事は無いと思う。Maxwellはもっと内向的だから。確かにRemy Shandはマーヴィン・ゲイの1面をしっかりと自身のものとしている。たださ、周りがおだてすぎると、どんどんこの先、悪くなっていくと思う。アリシア・キーズと一緒で、2作目は駄作になる可能性が高すぎると思う。若い頃に余りに完成されすぎてる奴は嫌いな面がある。それは「枠が狭い」と思うから。

「素晴らしい。全く文句無い。目指した"明るい内向性"は確実に手中にしている。
 さて、その先、君は何を目指す? これが君が惹かれたSoulの全てでは無いよね?」


って焚き付ければ、間違い無くグラサン取ると思うな。その先の歌は本気で聴きたい。Soulの再定義というテーマは一人の屍位じゃ無理だと思うけど、ここで踏みだせば間違い無く最初の人になれる。それが外側の人間だからこそ出来ることだと思う。黒人以外でR&Bとその奥のSoulを目指す人は、ここが視線に捉えるのが一番大切だと思います。


ちなみに、8曲目:rocksteadyをセレクトしておきます。出だしで「木洩れ日の召喚」を感じさせる。ホント、このままにするのは勿体無いレベルの新人。

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