Michael Jackson
"invincible"
声の表情が増えたと思う
[2001/11]

マイケルのボーカリゼーションの特徴は独特のアドリブ等、これまでも様々に言及されている。けど、今まで1番感じていた事は、Don't Go(行かないで:恋愛の終わり)とCome With Me(こっちでイイコトしようよ:恋愛のど真中)が同一の表情だった事。だから、唯一マイケル自身の気持ちが感じられるのが、パパラッチに対しての怒りや憤りだった。世界を直していこうSongも、偽善とまでは言わないけれど、切実感が伝わる訳じゃなかったもんなぁ。

だからこそPOPS大王だったのだと思う。デンジャラスと同時期に発売されたBobby Brownの方は、そこら中に"ねっとりH感"が漂っていて、「これを中学生で聞いてる俺はマズイ?」と思ったもんなぁ、、、その点で、マイケルのボーカルはバックの音を従えるというより、音と同列を意識してた。だから、こちらも純粋にリズムに預けれる安心感があった。

マイケルのダンスにしてもそう。世代的にムーンウォークを見た事は無いが、やっぱり1番ダンスが上手いのはマイケルでしょう。昔はマイケルだけ隔絶していたが、最近はUsherにしてもTyreseにしても、みんなちゃんとお手本にして研究してるから、イイ線いってる。けど、それでもマイケルのダンスは別格。その1番の特徴は

限りなく男臭くないという事
男装の麗人といっても通用するレベルは、マッチョなダンスの正反対で、流れるようなリズムがあった。まるで人間の体の70%が水分で出来ている事を実感させてくれる踊りだった。ってもちろん、クネクネしている訳じゃなくてね。水分といっても圧力を高めれば鉄も切れるのだから、芯が無いというよりも、組成を変えれるという印象だった。整形を重ねる事で、どんどん少女漫画チックな顔になっていったのも同じ方向性でしょう。だから幼児疑惑の時に、妙に納得してしまったのも事実だった。

リズム感がメインという志向性は嫌いじゃない。それをR&B-Timeで追っかける事は有りえないが、車で流せる曲というのも大事だし、やっぱりデンジャラスは好きだったから。本作はその方向性も確かにナイス。おっしゃる通りロドニージャーキンスに6曲任せる必要は無いと思うけど、1:Unbreakable, 6:You Rock My Worldはナイス。3:Invincibleも個人的に気に入りました。みんなネプチューンズとティンバランドっていうのもイマイチと思うから、ロドニージャーキンスをメインに据えたのは悪くないと思う。欲を言えば、新人を思い切って採用する度量の大きさは欲しかったけど。

けど、それよりも、このアルバムはマイケルの声の表情が伺える曲が増えたのが嬉しいです。10年ぶりの新作だけど、それまで沈黙してたのはやっぱり良かったと思う。

人間性の回復
それ位に[History]の彼の曲は壊れてたと思う。発売当初に友達から借りてテープに落として聴いてたけど、ホント、ブルーとかいうレベルじゃなくて「壊れてる」がピッタリ来る曲だったと思うから。自身の感情が出るのがパパラッチだけってのは、さすがにヤバイもん。本作では4:Break of Downから、あれ?と思う位にマイケルの感情が見える。そんな点で、1番お勧めは7:Butterfliesです。出だしの声で、ジーンと来るなァ、、、ホント。マイケルの透明感が良く出てると思う。マイケルはいい意味でもF***in'嫌いそうだから、好きなんだよねぇ、やっぱり。

もちろん失敗してる曲もあると思う。自作の8:Speechlessはドラマチックな展開にしたかった気持ちは分かるけど、バックコーラスの声がやり過ぎレベルまで行ってると思う。マイケルはそおいう所があるんだよなぁ、、、「自身が正しい事をする時ほど、相手のことを考えよう」というスタンスが無いから。人はそんなに綺麗じゃないぞ って思うもん。前半のボーカルがいいだけに悔やまれる。それは14:the Lost Childrenでも。子供の声ってのは、よっぽど律して正しく使わないと。

9:2000Wattsはギャグとしか思えない出来。確かにいつに無く低い声だけど、サビがバカ過ぎるし、わざわざTyreseを引っ張ってくるな!って思う。せっかくTyreseが2作目を2000Wattsとしたのに、最近のTyreseは劇画的だと思う。「Wattsにいた頃、君はマイケルの歌に何を思った?」って思うもん。こんなのは断るべきだと思いマス。

Babyfaceが作った10:You Are My Lifeも出だしてBabyface作と分かる作り。この出だしを聴くだけで、聴く気が無くなるんだよなぁ、、、昔のBoyzIIMenと微妙に変えてるだけだと思っちゃう。サビのメロディーも普通だし、光るモノがない。まあそれはR Kelly作の13:Cryも感じるけど。最後の最後で大げさになってる。最初は低目のバックコーラスが期待させるのだが。R Kellyもどんどんそっち系の曲が増えてるのは心配な所。そっち系を取り上げるよりも、その中を生き抜いて身につけた優しさを伝えるJaheimが1番であって、後はどうしても納得出来ない。それが今の自分の素直な気持ちです。

大した出来じゃない点では12:Don't Walk Awayも同じなのだが、これだけはマイケルの声が救ってる。こう思うと、この10年間のマイケルの歩みが見えてくるようで、、、

《別れ》
相手が誰かは分らないし、別にそこまでの興味は無い。けど、今のマイケルはこのフェーズで一番説得力のある声を出す。今までのマイケルには無かったレベルで。どんどん掘り下げれるし、どんどん入っていける。R&B-Timeでガンガン行ける。

個人的に1番気に入ったのは、Whatever Happens。イントロの物悲しい口笛?から秀逸。最後もそれで閉じるのも。何よりも、「俺だって、お前が去っていく理由があるんだ」という気持ちをガンガンに抜いて、痛みだけに昇華させている所が。RB-Timeの所で書いたけど、詰めこむ方が楽なのに、これは抜いて、ドンドン痛みの輪郭を浮かびあがらせてる。普通はこんな事出来ない。恋愛が終わった後は、いい訳詰めこむのが当然ジャン。だから、これが1番、先を示してくれると感じました。全く、マイケルにそのレベルを望むなんて、想像したこと無いけど、このスタンスは確かに今後の自分の指針になる。そう思って、ここをガンガンに突き詰めていくと、


マイケルはこの痛みを喜んでいる
と思えた。まるで恋愛が終わった後の痛みは、パパラッチがもたらす痛みの1億倍意味があるといわんばかり。マイケルだからこそ行けた地平線だと思います。普通はこんなの怖くて出来ないよ、、、けど、これを見せられると、少し勇気が出ました。何より、その気持ちを汲んだサンタナも凄い。最後にお互いがThanksと言うように、実はこれが最高曲だと思うな。って総合点ではもちろんButterfliesなのだが、深度でいえばこれだと思う。


相変わらずのP2S2R&B的なレビューだけど、マイケルとこの遣り取りが出来ると思ってなかったので、本作はかなり嬉しかったです。次回でもっとこちらを突き詰めたら、間違い無くヘビロテ・ランクインなのだが。

POPS大王なんてかなぐり捨てて、1人の40過ぎの男として立ってくれるなら、魅力的な皺が増えると思うよ。そろそろ、そんな歳だよね、マイケル。
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