Kelis
"Kaleidoscope"
サイバー・ディープ
[2003/11]

哲章さんの「最初は地味な印象だが、リピートすればするほどハマることうけあいの銀河系ファンク・アルバム」を読んでずっと気になってた。特にR&Bらしくない、美大の学園祭のポスターのようなジャケには惹かれてた。歌っているKelis自身もちょっと変わった人なんだろうと思ってた。だから2年前くらいに買ってたんだけど、ずっと音よりもKeils自身のDeepさに引っ張られていたので、ここまで遅くなってしまいました。

一番感じるのは、7:Suspendedです。自分の中のDeep信号(なんじゃそれ)が激しく点滅する曲。この時、二十歳というけれど、不思議と年齢を感じない声。若さで押してる面が無く、何故かファット。声の重さはKelly Price系だと感じるや。このDeepさをずっと突き詰めたかったのだけど、結局よく分からなかったです。ただ、Kelly Priceとかに感じるDeepさとちょっと違う気もして、あんまり落ち込んで苦しんだ感覚が無いと感じる。なのにDeepで、ずっと聴いてるこちらは混乱してた。そんなKeisの歌いっぷりを聴いてると、不思議とこのジャケとリンクしている気もする。

比べる作品としては、AALIYAHの2作目だと思うのだけど、あの作品でのAALIYAHの存在感よりも上の気がする。最終的にネプチューンズらしさよりもKelis本人が浮かんでくる。最後の14:Wouldn't You Agreeもそう。ネプチューンズがプロデュースした曲としてはJoeが歌ったInsn't this the worldと同じ位にオーソドックス。このデュエットでの歌いこみが、かなりDeepなんだよなぁ。とにかく重い。中ジャケの写真もそう。二十歳と思えない程にエゴがなく、この髪型とピンクの眉毛は、ある意味いっちゃってるのだが、不思議と不快感がない。ビヨンセほど喧嘩売ってないけど、切実感の漂う視線もそう。見開きのKALEIDOSCOPEと書いてあるページが一番かな。役割をCoolにこなしたAALIYAHよりも凄いと思う。声は1世代前の歌手のように重いけど、彼女の色使いはネプチューンズの音とよく似合ってる。

って、もちろん明るい曲も多いアルバム。一番は9:Ghetto Childrenかな。本HPでは密かにウエイトの高いMarc Dorseyも出演してる曲で、めちゃくちゃ明るい。色んな場面で流してハマル曲だと思う。13:in the morningもタイトル通りの明るさ。特にサビの部分が遠くまで伸びる輝く道を思わせて、かなりナイス。逆に2:Good Stuffや3:Caught out thereは声の重さとビートが絶妙に絡み合ってる。クリアーな印象を与えるAALYAH達の曲と違って、

鈍器のような切れ味
を思わせるところが最高。鈍器を使って粉砕することはあっても、切れ味なんかないのにね。なのに、Kelisの重い声とネプチューンズの音が組み合わせると、ほんとこうとしか言いようの無い曲が生まれてる。以前にも書いたように、AALIYAHとTim達の曲は棒手裏剣を思わせるが、こちらの組み合わせは素焼きのツボで殴り合ってる印象。なのに切れ味があって、刺さった楔から血が地面にしたたるようなAALIAYHとは違う。かなりワンダーで魅力的な世界。
とまあ、こんな事を書いてると、「あんたの頭の中もワンダーや」と突っ込み入りそうだけど、いつもこんなんんです、ハイw


ということで、未だに本人自身のDeepさが見えてないので困ってます。自分のDeepフレームワークに無いので、ホント、サイバーです。2作目はあの明るい雰囲気で迷ってます。この鈍器さを突き詰めた曲が聴きたいからなぁ。よくよく見ると鏡を蹴飛ばしてる?ジャケはカッコイイと思うのだが。今年に3作目が出るようですが、この安場のキャバレーのようなジャケ(ちょっといいすぎ)も困ってますw 個人的には、Xscapeのタミアもそうだが、マウス顔はかなり好みの性質なので、もうちょっとナチュラルメイクをして欲しいとも思ったり。


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