Donell Jones
"Life Goes On"
「求める像」と「求められる像」の掛け橋
[2002/07/06]

以外と思われそうですが、この作品は買いました。やっぱり"U Know What's UP"は名曲だったから。整形したレフトアイにUsherまで出てるビデオクリップは、1度見たときからハマッてた。けどそれ以外の曲は内向性ばっかり。アルバムジャケットもギター弾き語りのショット。だけど哲章さんが言うように、それらの曲はどれもイマイチだった。「自身が求める像」と「自身に求められる像」がこれほどミスマッチしている人も珍しいというのが素直な感想だった。

けど、やっぱり新作を試聴する位には気になってました。聴いてみたら1,2曲目は同じ系統のUP。U Know,,,ほどの絶妙感は無いけれど、ナイスな曲だった。それに裏ジャケに惹かれたんだよね。AARON HALLの裏ジャケと同じ系統で、あの雰囲気は結構好きだから。

ところが、3,4曲目はイマイチだった。言っちゃ悪いけど2枚目と同じフェーズだと思う。その時点で買ったこと後悔してLATHUNばっかり聴いてた近日なのですが、5曲目Do U Wannaからかなりナイス。ついつい引き込まれて、気づいたら全12曲終ってた。11曲目Cameback,12曲目I Hope It's Youが彼のストレートな方向性だと思う。だから、1,2曲目の「求められる像」と、11,12曲目の「求める像」の間を、5,6曲目がちゃんと繋いでる。そんな結論になりました。彼自身が「今までの中で最高傑作」というのも良く分る。P2S2H2としてはDonellは本作以上は作れないだろうなぁ、、、と思ってしまったが、彼にとってそれだけの作品なのは確か。


特にアルバムタイトル曲のLife Goes Onがいい
この一曲をもって買ったのは後悔しない。本当に両方の方向性が上手く交じり合ってる。バックのちょっと哀しいループが好きなのかな? 本人の最高傑作でしか生まれない雰囲気が曲全体を包んでいて、決して売れない曲なのだが、勇気をくれる面がある(うーんこの瞬間にTommy Simsが浮かんだが・・・)

もし彼が有名なアーティストなら、この作品はJoeのBetter Days位の評価は受けると思う。けど、残念だがDonell Jonesはそこまでの位置付けじゃないとも思う。何故だろうなぁ・・・。具体的に何かが悪い訳じゃないのだが。ガツンと来る面が無いからかな。


とまあ、「あんたそれでも誉めてんのかい」と言われそうですが、彼の最高傑作と思う6曲目はかなり気に入ってます。ジャケットにDONELLJONESLIFEGOESONと均等に配置されてるフォントを見ても「だろうなぁ」と思うから。その瞬間に彼と意志疎通が出来たと勝手に思い込んでのUPです。U Know What's UPが大ヒットしたからこそ、そこで足元を見詰めたからこそのLife Goes Onでしょ。そんな意味も大きい。


ということで、喧嘩を売ってる記述ばっかりで恐縮ですが、今まで90'SR&Bを追っかけてきて、この視線は譲れない面がある。そりゃDonellの次回作がもっと凄くなるなら滅茶苦茶反省するけれど、それは無いと思っちゃう。その歳から有無を言わせないような核を手に入れるのは、若い頃の100倍難しいと思うから。

ジャケットを見る。イイ表情なのだが、深みは足らないとどうしても思っちゃう・・・・ある種の問題点が端的に出てる気がする。けど、そこから彼らのようになるには「毎晩、叫べない地点まで叫ぶ」としか言えなくて・・・それ位にTommy Simsの叫びざまは圧巻。誰もついて来れないレベルだから。

誰だって「求められる像」と「求める像」の間のミスマッチを抱えてる。本作品はその両側を彼自身の方法で見事に繋いでる。ここまで到達した彼の、この先の歌手人生はどうなるのだろう?? そんな本作の全米No1は本当におめでとうございます。

《ミスマッチがあるのが自然なんだ》と思えるようになるのが強さだと思う。《ミスマッチが無いのが自然》なんて一体誰が決めたんだよ、と思うもん。このどっちが正しいなんかは誰も分らないのだから、なら前向きな思考の方がいい。常勝思考みたいな我田引水な思考法は嫌いだけど、スタート地点を楽目に引いたことで苦しんでる姿を見ると、今まではアホかと思っちゃってた。そしてDonellはそのミスマッチに苦しんでる。けど、ここまでやれると認めるなぁ。

うーん、うーん、だから、化学反応が自分の中で起こってる。もう何百回とリピートしたもんなぁ。


そして今思うのは、やっぱり《両側》なんだよね。自分自身は「求める像」の方に立っている訳じゃない。そのポジショニングの時点で多分間違っているのだろう。だってこの歌を突き詰めて感じるのは、

「皆が望む事がある」
「俺自身が望む事もがある」

「そして俺には現実の日々がある」

そんな手触りだから。この詞が示す《どうしようもない現実感》が彼を両側から均等な距離に立たせていると思う。社会人になった身としては、彼のこの現実感が1番しっくりくる。色々潜り抜けてきたつもりになってたけど、「学生時代は何が生じてもやっぱり学生身分だった」と当然の結論な最近です。
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