Donell Jones
"Where I Wanna Be"
緩やかな敗北感
[2006/02/05]
 
「Donell Jonesを好きというR&Bリスナーはどれぐらいいるのだろうか?」
こんな設問を立てた時、あまりいない気がしてる。

「Donell Jonesの大ヒット曲 U Know What's Upを好きな人はどれだけいるのだろうか?」
けど、こう聞けば、R&Bリスナー全員が好きだと思う。それ位に本曲は大ヒットした。これから幾年経っても、90年代のベスト曲を作ったら収録されるんじゃないかと思うほど。そんな意味では、個人的にはJoeの2作目に近い。あの作品にも大ヒット曲:All the thingsが納められているから。それだけでなく、Joeを好きというR&Bリスナーは沢山いるんだよね。

JoeとDonell Jonesの何が根本的に違うのだろう?
昔から、それが良く分らなかった。お互いの大ヒット曲は同じくらいに凄い。このU Know What's UpのVCも、本人が適度なエロ顔してて、R&Bの王道路線だしね。だから問題はそれ以外の曲なのだ。3作目の紹介をした時もそう。この作品をそんなに誉める人もいないだろうなぁ、、、と思いつつも結構気に入ってた。その後、2作目を買って聴いていたけど、やっとこの「緩やかな敗北感」という言葉が浮かんできたので、R&B-TimeにUPすることにしました。

けど、この感覚の共有性自体が、そんなに高くないと思う。そこが本HPで強力PUSHする作品と違う。だから、この文章を読んだ後に聴いてみて「そんな感じねーよ」って思う人もいると思う。アルバム点数UPに一言欄をつけても良かったのだけど、Donell Jonesを正面から取り上げている文章が少ない気がしてて。だから此処に書く事にした。

「緩やかな敗北感」と書いているけど、そんなに改まった意味じゃない。単に

あーあ、自分はモノにならなかったなぁ・・・
っていう感覚で、負けどん底のTommy Simsとは違う。元々、U Know What's UpのVCから知ったから、このジャケを見て凄くびっくりしたんだよね。ギターに拘るのは分るけど、このカーボーイハットとかが。あの傑作曲と妙にミスマッチしてた。それがJoeの2ndのジャケと大きく違う。確かに哲章さんが言う通り、裏方感覚が濃厚にあって、そんなジャケといえば、その通りだ。

だけど、裏方に居続ける人にも色々と理由があると思うんだよね。このDonell Jonesには敗北感を感じる。それも強くないモノを。敗北感を「頭の上に数トンの塊をのせられる」か、「体をガンガンに締め付けられる」ような感覚とすると、それが弱いんだよね。語感として「軽い敗北感」よりは「緩やかな敗北感」がいいと思ったから。そんな意味では、「締め付けが弱い敗北感」って意味です。確かに歌詞としては恋愛を歌っているかもしれない。けど、アルバム全体として恋愛をあまり感じない。

恋愛は喪失感であって、敗北感ではない

そういうのは、Caseを聴けば良く分ると思うよ。あの作品が発表されて随分経っているけど、同じ方向性であれを越す作品はまだ無い。この先、ずっと無いかもしれない。それ位の喪失感なんだよね。その喪失感を突き詰めて、ある種の爽やかを達成しているのが凄い。だからしょっぱなから聴きやすいんだよね。そしてトコトン深みのある作品になっている。

喪失感っていうのは、簡単に言うと、好きだから心を持ってかれて、触れ合ったから肌を持ってかれて、この先どうすればいいか分らないから背骨と視線を持ってかれ、残ったのは醜い肉の塊。そんな感覚なのにCaseはそれを突き詰めて、I'm the desert without the sandと歌ってる。これはやっぱり無茶苦茶なレベルだ。だからcaseを好きな人も多いと思う。けど、残念ながら、Donell Jonesにはその突き詰めが無い。だから、Tommy Simsのレベルまで来れてない。
けど、2:Shortyから彼らしい手触りは良く出てる。重くなく気楽に聴ける感覚もいい。

3:Where I Wanna Be
大ヒットした曲がありながら、タイトルは別にするのもJoeの2ndと同じだ。この曲はかなり好きなんだけど、これだからダメなんだと感じる。なぜかって、「そこに女性が来なかったらどうするの?」という素朴な疑問に、この曲は答えれないと感じるから。Whre I Wanna Beは本人が理想としてる恋愛の状態を歌っている気がするけど、どうしようもなく独りなんだよね。

僕がうけるこういう感覚に、どれだけ共有性があるのか分らない。けど、JoeのBetter Daysに、「とはいっても、君は独りなんだよね」と感じた人は納得してくれるかもね。それ以外の人は絶対に買っちゃいけないと思うほど。あのBetter Daysの時もそんなに自信があった訳じゃない。ただ、やっと卒業の目処が立って、正月も大学行って独りでいた頃に妙にぴったり来たから。「相変わらず自分は変テコに聴いてるよなぁ」と思ってたけど、後々、Joe自身がそんなことを言ってると知って、結構嬉しかった。よくよく見たら、そのまんまのジャケだしね。

本作品にも同じ感覚を受けるから。そんな意味では、そこそこの(空)自信はあるんだけどね。U Know What's UPを除けば、一番気に入ってるのが、5:This Loveです。Where I Wanna Beよりも色気がある。もうちょっと「女性を呼んでこよう」という意志を感じるから。このレベルをWhre I Wanna Beで出して、This LoveをもっとHIPにすれば、Joeの2ndのレベルまでいけたかもしれない。そもそもあの作品はGood Girlsがあるからなぁ。あの詞をあのトーンで歌える歌手も二度と現れない気がしてる。そんな意味ではJoeを尊敬しているのかもしれない。

6:All Her Loveもなかなかいい。けど、このタイトルをつけるのには、何かが根本的に足らない。それを未だに上手く言えないけど、なんていうのかなぁ、All Her Loveを貰って、喜んで満足しているけど、祈るような感謝が無い。何が後1歩足らなくて、この曲を贈られた女性は喜ぶのかなぁ??と思う。名曲になるには、自分自身の枠から踏み出してない感覚を受けるから。男は気に入る。それは彼の名誉のために言っておく。けど、こういうフェーズの曲は、女性が気に入らないとダメなんだよ。無理に異性のファンを捕まえる必要も無いと思うけど、その面が弱すぎる気もしてる。Where I Wanna Beもそう。女性が「言ってみないなぁ」と思わせる何かが無い。

very slowで攻めた8: Think About Itはエロさもswearもsweetもあまりない。この領域で激傑作を作れるMaxwellとの差は大きい。個人的には「この至らなさ」に惹かれるんだけどね。11:I Wanna Love Uは大きく手を広げた曲。結構イイ曲なのだけど、


なぜ、この人はいつもWannaなのだろう?

かなり疑問に思ったから、ついついサイズをUPしちゃった。wanna、wanna言い過ぎてる気もする。そういうタイプの人っていない?「〜〜〜できたらいいなぁ」って言い過ぎるから、失敗する人。曲としてはいいからこそ、余計にこんなことを感じてしまった。男っていうものは、負けが確実でも、勝負に出なくちゃいけない時があると思うんだよね。周囲から、「あんだけ言ったのにばっかじゃない、ふられてやんの」って言われるぐらいのさ。それが出来なくて、負けそうな時は常に「〜〜してくれたらなぁ」って言ってる男性の気もしてきた。

根本的にダメさを示しているのが、12:When I Was Downです。Curtisのギターコードを使いながら、ここまで駄曲が作れるの?という位の感覚。まだそこら辺の高校生に作らせた方がマシだと思う。それ位に元曲のカッコよさがない。普通は恥ずかしくて収録しないぞ。プロデューサーは完全ダメ出ししろよ。この曲を持ってきたら、「一年ぐらい、出直して来い」ぐらい言えば、一年後に傑作アルバム作ったのかもしれないのにね。惜しかった。


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ということで、結局、誉めてるのか、貶しているのか分らなくなってきましたが、「自分には何かが足らない」と思う男性は、親近感を覚えると思うよ。曲を一つずつ取り上げると恋愛なのに、アルバム全体としては敗北感が漂う。そんな手触りのアルバムです。あんまり点数UPする気はないけど、70点台かな。U Know What's UPの良さを加味すれば、80点でいいかもしれない。

「誰一人の憧れになれない作品だけど、この作品こそが一番近い場所にある」という男性は沢山いると思う。そんな意味では僕らに一番近いアルバムなのかもしれない。その視点から見れば、100点オーバーなのかもしれない。音楽に憧れでなく、自分と同じ場所を求める人は是非お勧めです。


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