Angie Stone
"Stone Love"
《想い出》は《芝生》となりて
[2004/08/01]

ここ数年、「好きな女性歌手は誰ですか?」って聞かれたら、「MaryJ.とAngie Stoneかな」って答えてる。「なんでですか?」「MaryJ.は相手に毒づいた事はおろか、悪く言ったことさえ一度も無いから。Angie StoneはDon't say my name, never を一番哀しい声で歌うから」 そして、「JanetもJanet.とVelvet Ropeの頃は好きだった。けど、今は想定してるマーケットが大きすぎる。そのマーケットに対して売ろうとするから、胸ポロリもやらなくちゃいけない。今の10分の1に絞り込めば、きっと傑作を作ると思うのだけど」って補足する。

こう見るとDeepな歌手ばっかりだけど、現在のR&Bを恋愛Deepと言い切ってしまったHPとしては当然なのかもしれない。って、本当の意味は「どん底を潜り抜けてる」になるのだけど、「生まれ落ちた境遇としての底」はだんだん薄らいでいるのが、アフリカン・アメリカンの状況なのだから。そしたら、恋愛Deepになるのだと。
もちろん仕事Deepもあるのだけど、歌手として本気で仕事Deepになってしまったら、その後に作品を届けられないと思っちゃう。それぐらいに今はアーティストを見切るのが早い時世になってるから・・・。本気の仕事Deepを感じるのはTommy Simsだけだ。


K-ciもD'Angeloも両方ともハチャメチャで魅力的な男なのは確か。なのに「食事が喉も通らない」ほどの境遇を潜り抜けた二人の女性の方が今も輝いているし、この先も輝き続けるだろう。底で逃げなかったというのは、それだけの価値がある。
K-ciがソロ作を届けてくれるのか分からない。いつの間にかその話は聞かなくなっちゃった。冬の日に素っ裸で土下座するような曲が無い限り、ソロ作を作る意味ないしね。K-ciがそこまでできるのか謎だったりする。それはD'Angeloもそう。今までのような「恋愛については歌わない」みたいな態度でいつまで持つのだろうか? この体験を恋愛の先まで昇華しようとしたら、後5年は軽く必要だと思う。彼は一体いつになったら3作目を作れるのだろう? その間にAngie Stoneとの差は致命的に広がってしまうんじゃないかな。

けれども、人はそんなにポンポン傑作を作れないと思う。傑作アルバムの次回作はどうしてもテンションが落ちる。いつだって、文句なしの名曲があるMaryJ.が特別なのであって(TestimonyやUltimate Relationship)。だから本作はそこまで期待してなかった。このジャケットも。8 BallというタイトルがStone Loveに変わっても、「8 Ballの方がカッコいいじゃん」って思ってた。店で聴いた時は皆と同じようにデュエット曲以外はイマイチって感じてた。

けど何故か、引っ張れる曲があった。「あっ、今のもう一度」  「あっ今のもう一度」  「あっ今のもう一度」を三回繰り返して、観念してRepeatボタンを押す。いつもそうなんだよね。傑作アルバムに出会った時は・・・。

何回繰り返したか忘れた。HPでは「100回繰り返す」と書いてるけど、そこまではやってないですw あれは言葉の綾です。1時間はえんえん繰り返してるから、20回強かな(あんた5倍も違うじゃんw いやいやそれを3日はやるんだが。 そして、やっと霧が晴れた。この場所から振り返ると、2:I Wanna Thank Yaも 5:Stay For A WhileもStone Loveの本質じゃない気がした。入口を広げるためには必須なんだけどね。


Stone Loveの本質を伝えるのは、ちょっと難しい。だから、ここは皆さん、男の子の立場になって、目の前に女の娘がいると思ってください。少し会話するだけで、貴方は何かを感じてる。彼女の心の奥底に何かある。そこを見て、踏み込むのに躊躇っている自分自身がいる。そんな状態を。

たとえるなら、彼女の心の奥はアマゾンの熱帯雨林のよう

巨木が天を突き、ツタは何重にも絡みつき、蛇とか蛭とか、オゾマシイ生き物がうじゃうじゃいる。昼でも光は全く差さなくて、道の影も形も無い。そんな状態。
その最深部がどうなってるのか、何も分からない。古い神殿があるのかもしれないし、覗き込んだら目もくらむような大きな穴があるだけかもしれない。もっとやばければ、葉が積み重なって落とし穴になってる。

こんな状態なんだよね。恋愛Deepの女の娘を目の前にすると。
この状態になったことのある男の子は、本人がどれだけDeepじゃなくてもこのHPを全部読み切っちゃうだろう。その奥にたどり着くために。 どれだけヤバイものがあろうとも、終わっているならば進まなくちゃいけない。なぜなら、彼女自身が次の1歩を踏み出す為に苦しんでいるのだから。

じゃあ、MaryJ.やAngie Stoneのような、自力で底を潜り抜けれる女性は何をするのか?
彼女達は信じられないような事をする。前作、Mahogany Soulで見せたように、自分自身でその巨木を切り倒すんだよね。それ位に、SnowflakesやWish I Didn't Miss YouやEasier Said than Doneは凄い。極めつけはもちろんMakings of YouからMad Issuesです。この曲は頭上から振り下ろされると書いたけど、それはこういう意味です。

巨木が切り倒されて、ツタも無くなり、熱帯雨林でうごめく生き物達の姿も消す。そしたら、何が起こるか知ってる? ここで、そのまま地肌が見えてると思う人は間違ってる。本気の恋愛ってのはそういうものじゃないと思うな。過去の方を振り返るたびに、いつも目にするDeepな情景。どう歩いても、いつもそこで止まってしまう。そんな薄れない空間。
それを昇華すると、ふっと想い出す情景群がある。今の生活の何かの弾みにふっと想い出すような。「そういえば、、、あんなことも、あったんだわ」って浮かんできて、今更ながらに苦笑してる。Deepな情景じゃなくて、ただの何気ないワンシーン。それが、ふっと湧き上がってくるだけで。

地が豊穣である限り、巨木が倒れて日が差し込むようになれば、新たな芽が吹くのだから
自力で此処にこれた人は、ここで優しくなれるんだよね。切り倒す時は本人も泣き叫びながらだけれども、その後に湧き上がってくる《想い出》は色んな形にもっていける。

Angieは、そよ風に揺れる《芝生》にしてるんだよなぁ
これこそがStone Loveです。めちゃくちゃ穏やかで優しくて魅力的だよ。ドン底の時に全ての男性がやばさを感じたように、全ての男性がその魅力を感じるだろう。そこまでのLoveです。ここまで出されたら、純粋に「この芝生の上に寝っころがっていいのかな?」って言いたくなる。

曲として最初に感じたのは4:U-HAULです。Mahogany Soulを聴きこんだ人は、ここで気づかなくちゃいけません。同じだけの深みのあるFuuだけど、色合いが変わってる。3:37でのバックの声は同じレベル。曲としてはNo conversationって言ってるのに、前作ほどの痛みがない。「あっ・・・」って感じた。

もっと来るのはインタルードの7の次、8:You're Gonna Get Itです。Tell Me What to doというフレーズを、同じだけの深みで優しく魅力的に歌ってる。今まで「MaryJ.とAngieの言う事ならなんでも聞く」と思ってたけど、マジ?オレッチからも頼んでいいの?と純粋に嬉しい(オイオイ この声と同じ表情でこの台詞を言えば、全ての男を落とせるようになります。P2S2H2がこれだけ断言する。特にFuuに歓喜の伸びがある。それが天上界レベルまで行ってる気がするや。

9:Come Home(Live With Me)はもっと凄い。この出だしの声だけで、全て持ってかれる。滅茶苦茶凄い。信じられないレベルしてます。この度数はMaryJ.は出したことが無い。そりゃなぁ、、女性のタイプが違う。Maryは死んでも相手の男を悪く言わないタイプだから。Angieは違うんだよね。だから輝き方も正反対。10:You Don't Love Meもここまで来た女性だからこその断罪。Mad Issues並に歌いながらも、本作だからこその優しさに満ちている。相手の男の立場になったら、この曲で二段底だ。

12:That Kind of Loveはあまり感じない。僕がまだBetty Wrightを聴いた事さえないからかな?今後の課題です。

凄いを連発しているから、「旨いだけを繰り返すだけの料理批評家」にでもなった気分w けど、一番凄いのは14:Cinderella Ballin'だと思う。この曲の出だしの、"Angel"ってフレーズ。もともと深みが広がるような厚みのある声をしていたけど、本作によって本気の色気が入った。Angie Stoneの若い頃の作品はしりません。Devox feat Angie Stoneを聴いただけです。メリーさんの羊とかあって、楽しいアルバムだった。けど、色気からは遠かったなぁ。だから、本作こそが、Angie Stoneの人生の中でMaxに輝いている瞬間だろう。そんな気がした。

15:KARMAは別次元の曲。カルマというタイトルをつけるだけの曲になってる。この曲によって、Angieは真にネクストレベルに行った。その地平線は未だ自分には見えない。ただ、この声だけは、今までと根本的に違う。

もし、全ての人の全ての恋愛が一つの根から生まれるような、そんな地点がこの世の奥にあるのならば、
彼女はそれを垣間見たのだろう。

そんな曲です。それしか今の自分は伝えられない。この曲だけは、もう1歩聴き込む必要がある。





[2004/08]
Angieがこれだけ傑作を作ったとなると、本人がどれだけイヤがっても、D'Angeloは世界アホ男協会入りでしょう。副会長のK-ciは女にかまい過ぎて一人じゃ満足できなかったが、DはMad Issuesにかまい過ぎて女性のウエイトが低すぎたということかな。こうみると正反対。だからこのさい、副会長ですねw じゃあ、会長R Kellyはどうかって?
うーーん、R Kellyのエロソングを突き詰めて見えてくるのはエロじゃなくて幼児期。だから、慈母かな。彼が本気で好きになれるのは、神に仕えていてどんな男でも慈しめるような女性じゃないかな?って感じたことがある。

Stone Loveの8:You're Gonna Get Itですが曲の最初にLoveってつぶやいてる。その重さが最高。その上で、Tell Me What to Doと歌うって事は、今の彼女はあの頃のD'Angeloさえも受けとめれる。これこそが潜り抜けるという事なのだろう。一番凄いのは14:Cinderella Ballin'だと思う。この曲の出だしの、"Angel"ってフレーズと書いたけど、 Tick Tac Twelve o'clockの部分も凄い。この、どんな男でも掴まえれる深みのある色気は最高。久々に背骨から来た。Missy以来か。ドン底の果てにこんな歌を歌うのが、Ultimate Relationshipで色の無い極限に行ったMaryJ.の正反対だ。
うーん、このレベルに見合う男の言葉ってなんだろう? 
零時過ぎて風呂から出てきたら、パジャマは着なくていいんだよ」Angie最高の零時に見合う男性側の言葉はこれかな?
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