Jaheim
《告発》するくらいなら、《ともしび》を
[2001/06/27]

"Ghetto"とは元々ユダヤ人地区の意味だったと聞く。その意味が遷移していき、今はスラム街,貧民街を指すようになった。そんなGhettoの生活がどんなのかは想像するだけおこがましいが、R&Bを聴く限り避けて通れない。 昨今は日本人でもR&Bアーティストは増えたが、彼,彼女らはどうしても軽い気がしてしまう。その感覚の差の奥にGhettoがあるのは間違いないと思う。


R KellyもDave HollisterもGhettoを取り上げて歌っている。Jaheimもそんなアーティストだが、根本的に違うと思わせる点がある。それは、Ghettoの存在を告発してない事。問題提起は大切なことだと思う。 それが無い事にはどんな運動も生まれないし、その源流はキング牧師まで行くのかな。だけど、問題提起する彼らの今はどれだけGhettoに近いのだろう…と思う時がある。

無い方がいい事なんて、この世にゴマンとある。けど、Ghettoを否定して、今更社会主義も無い。貧富の差、それが無くなるのなら、誰も苦労しないし、アメリカはそれを許容する事こそが、社会に活力を生むと考えているのだから。もちろんR Kellyに偽善を感じる人はいないだろう。昔のマイケルにそれを何処かで感じる事があっても。

Jaheimは何よりも、その年齢が強みだと思える。この年代では社会的に捉える事よりも、個人的に捉える事が先に来るのであり、それは彼が良く言うように、一人で聞いたルーサーヴァンドロスにまで繋がる実体験なのだろう。だからこそ、彼の説得力は大きい。

何よりもこの、実感のこもった声。それにつきる
似ていると言われるテディーペンダーグラスはまだ聴いたことが無いけれど、Jaheimを聴いてたら欲しくなってきました。Jaheimの日本盤が初めてだと思う。輸入盤の横に、バイオグラフィーと簡単なコメントが付いた表ジャケットを置くのは。Missyの新作でもやっていたから、やっぱりいい企画だったんだね。 あれをみて、「やるなワーナー・ミュージック・ジャパン」と思った。大切に育てようって言う心意気が伝わってきたから。 けど、CDケースの横幅は守るべきラインでしょう。これからは気をつけて欲しいと思います。

Jaheimは歌は上手い。けど、歌が上手い人ほど何を伝えるのか不明確に見える時がある。確かにこれだけR&Bにハマっているのだから、声の表情を聴きたいとは思う。けど、1人の世界を作るなよ、、って思う時がある。それだけ自分の声に自信があるとしても、 1人で歌えば、って思う。 というよりも、それじゃあ声テクニックの展覧会でしかないじゃん。最近は音の展覧会も多いなぁ、、、けど、そんなのはオコチャマ用でいい。

やぱり、歌わざるを得ない物が1番大切なのであって、それを多数の人に伝える為に声があるのでしょう。
その点でJaheimは明確な感情を詰めこんでいる。それも小難しくなく。意味を取ろうとしなくても、彼が何を背負って、何を伝え様としているのか、どんなシュチュエーションを歌っても、心に飛び込んでくる。 スキルだけじゃないんだよね。単に歌が上手いだけの、声が太いだけの、喉が良いだけのとは訳が違う。Jaheimは大きな皮袋に見合うだけの詰め込めるモノをもっている。

強引に人を3タイプに別ける。

光を浴びる事を目標にする人
光で照らす事を目標にする人
灯火を渡す事を目標にする人


Jaheimは間違い無く、灯火を渡す人になろうとしている。そんな心の灯火の一つ一つがGhettoにとって必要なのだと。

聴けば優しくなれる
その理由はここにあると思う。
二十歳を超えれば選挙権を持つ。文句を言う事は容易い。けど、大人になる程に"自分は関係無い"という態度も許されなくなる。 だからこそ、今、R Kellyは苦労していると思う。もちろん、その年齢で真正面から 取り上げ、それを背負っているJaheimは凄いと思う。しかし、そのスタンスはその絶妙な歳だからこそ 出来るとは思う。彼は、この先、何処に歩いていくのだろう。
[2001/07/08]

そうそう、もう一つ、Jaheimにはカッコいい所が有る。
それは、バラディアーの称号を誇りに思っている所

今の若いアーティストはこの言葉を毛嫌いしている。そして殊更にUpを強調しようとしている。それはTyreseでも。雑誌のインタビューでもあった。 そこら辺の感覚は日本にいると良く分らない面もあるが、80年代に一世を風靡したバラディアーという言葉の意味は悪い方向に移っている。 その理由としては、社会がよりとんがってしまって、昔なら当然の様な一家の団欒などが、プチジョワ(小金持ち)として貶させるか、遠い憧れとなってしまったからでもあり、 、、その遠い憧れを志向する表現は、団欒よりも、"Song For Mama"という形で表現される事が多い。 だからこそ、当然の感情=[家族への思い,恋人への思い] を歌うバラディアーに希求力が無くなってきたのだろう。今は、恋人への思いにしても、シュチュエーションがとんがっていると思うから。

けどJaheimにはそれがない。この言葉に誇りを持っている。だから他のアーティストのような軽い感覚がない。 本当に、ルーサーの事好きなんだなぁ、、って思う。地に落ちた物を蹴飛ばすのは誰にでも出来る。 そんな面で格好つけるのなよ・・・ それより、それを手にとって、もう1度輝きを取り戻す為に磨く事。 それが、1番、カッコいいもんな。

それにしてもTyreseは幼い頃、そんなアーティストに巡り会えなかったのだろう。可愛そうだね。 海図の無い航海をしていると思うから。




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