Johnny Gill
"let's get the mood right"
このアルバムは「歌館」、そして彼は「歌男」
[2002/02]

「歌」という概念は人それぞれである
このアルバムを聴き込んで、自分の「歌」に対する世界が広がったと思う。その結果として思うのは、「歌というこの世の事実」にどんな意味をこめるのかは歌手それぞれの、聞き手それぞれの自由なのだと。もちろんR&Bにハマっているのだかこそ、何よりも歌に対する拘りは大きい。それはアフリカン・アメリカンの歌モノにハマル全ての人の同意だとは思う。
とかなんとかいっても、実際は「コーラスワーク」とか「シャウト」とか歌の表現手段に対するコメントが多くて、真正面から「歌って何?」と聞かれると困っちゃう。というよりもそんな真正面からの設問なんて、有り得ないと思ってた。

実際、聞かれたって、Fuckin' Fuckin' Fo Fo FoOShava ShavaCome Back to MeCome inside My Bedroomって思ってた。それでR&Bの「歌」ってのは殆どOKなんじゃないかと、思っておりました。(個人的には"K-ci!!! K-ci Open the Dore" "HaHaHaHa,,Some More"というJodeciの3rdのSome Moreは大好きだけどw) けど、それがまだまだアマちゃんという事をこのアルバムで教えたれた気分。


「歌」ってのは重厚に包まれたHipさなのだ
このアルバムでJohnny Gillはこんな「歌」を提示してる。普通はHip剥き出しってのが90年代以降の特徴なのに。けどさ、そんなHipさを本気で追っかけて見得てくるのは虚無感なんだよね。そりゃ、実際にそうしても、最後に残るのはこれの様な気もする。だからこそ、そんなアルバムは嫌いじゃないけど、R&B-Timeで本気で追っかけるのはしなかった。だって、その度に毎晩、自身がすり切れてくんだぜ。普通にやってても、そうなっちゃう時もあるってのに、ワザワザそんな事やってもしょうが無いジャン。まあ18までならそんな破滅願望が見え隠れしてる行動をしちゃうのも人って生き物だと思うけど。

だからこそ、今まで自分は「どうしようもなさ」を感じさせるアルバムや「どん底」を感じさせるアルバムを本気で追っかけて来た。そりゃねーその結果として、生まれるのは1歩を踏み出す勇気だもん。そんな意味ではR&B-TimeとHipさってのは背反事象だとも思ってた。

けど、このアルバムだけは違う。そりゃ色々Best1で「モノトーンなアルバム」って紹介してるほどに、最初の印象はモノトーン。ずっとそうだと思ってたけど、この前、このアルバムに込められた色が見えてきた。だから楽しくなってガンガンに追っかけたら、

奥底の色を重厚にモノトーンで包むのが歌なのだ

という彼の想いが分てきた。めっちゃくちゃいいよ。このHipさは。追っかける程に味が出る。やっぱり、「90年代最初の全米No1を持つJohnny GillだからこそのHipさ」と「彼の激ウマさ」と「歌手人生をかけた歌への想い」が生みだす歌世界。本当に歌が上手くて本当にHitに恵まれる歌手ってやっぱり少ない。こんな条件が揃う事なんて、ホントに10年に一瞬だもんね。

そりゃHoward Hewettの"it's time"は哲章さんが彼のベスト・アルバムにして、90年代最高のインディ・ソウル・アルバムのひとつだった前作≪It's Time≫に比べると、いささか見劣りするのは否めないが、ハワードのしなやかなテナーが、思いを噛み殺すような低音のクルーンから絹をすべるように甘いファルセットへとせりあがるスリルには何物にも代え難い魅力がある。と書いていらっしゃるのでもちろん購入。確かにファルセットへの持っていき方は絶品。だからHoward Hewettも激ウマ歌手登録ですが、彼のこのアルバムは「女性の涙をシルクのハンカチでふき取る」様なイメージのアルバムで、もちろん私に合いません。こんなスタンスは数年後の課題となっております。


だからこそ、この重厚に包まれたHipさがたまらない。そりゃ、まだまだHipさは求める年頃だもんね。このアルバムの包み具合を知れば「あの娘に対して流行りの2Stepで行こうとしてた俺が間違ってたのかー」と教えられる事うけあいだねw

という事でこっから先はいつに無くぶっ飛びイメージの世界っす。
このアルバムは手紙から始まると思う。ひっそりと女性の元に届く手紙。上質な封筒に、優雅な文字が踊ってるのに、上等な香りまで漂うのに、、、書いてある内容は「番地」のみ。
(やっぱりこんなイントロじゃないとね)

で、数日間悩んだ彼女はついに書かれている番地に向かう事に。もちろん彼女の乗る車もゴージャスです。もちろんここら辺は全部モノトーン。けど、僅かに色がついてる絵です。

番地に行くと、そこだけ森という位に木々に囲まれた館が。窓も全部閉まっているて、わずかな光も漏れてないのに、そんな面では幽霊屋敷に近いが、寂れた感覚はゼロ。もちろんクモの巣なんてありません。毎日しっかり手入れが行き届いてるのに、何故かひっそりとした佇まい。
これぞ歌館

入口を探すのに疲れ果てる女性。やっと重厚な扉を見つける。背丈の3倍はあるんじゃないかという扉を開いて、やっと歌館の中へ。濃紅の絨毯が惹かれてる。その中では仮面舞踏会。なんてオチはありません。あくまでも歌館の中にも人はいない。けど、所々に明かりはついている。

そして何処からともなく聞こえてくるJohnny Gillの歌声

この先彼女は、書斎や応接間などの色んな部屋を探しまわるのだけど、部屋毎で謎解きを求められる。そんな意味ではバイオハザードの世界に近いかも。どっかのメーカー、こんなゲーム作ってくれないかな。そしたら世界中のR&Bファンが買ってくれるハズ。

いやー、久々に楽しいイメージが浮かんできた。
という事で、こんな手触りのアルバムです。「重厚に包み込む」 今後のキーワードだなぁ、これは。この作品だってちゃんとプロモーションすれば、全米No1だってとれた気がしてくるや、、、

Johnny Gillが新作を発表出来無い事。それはR&Bの大きな損失だと思う。


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