Charlie Wilson
故・無庵様より頂いたメールの抜粋です(2004/08/22)」

<中略>
さて、Shavadaba-di-ti-tiの件ですが、録音物として一番分かりやすいのは1982年に発表されたGapBandのOutstandingという曲中でのShavadavaです。
たしか12インチのバージョンで聞いたと思いますが、アルバムにもアルバムバージョンが収録されていたと思います。
それ以前以降もけっこうあるかも知れませんが、はっきりと記憶しておりません。
記憶があいまいなのは、CharlieWilsonがライブではしつこいくらい頻繁にこのフェイクを使うので。

あのShavadaba-di-ti-tiは、カルバンが良くやるイントネーションが基本なのですが、ほかにも様々なバリエーションが存在します。
CharlieWilsonの1992年に発売された1stソロアルバムで、そのバリエーションも含めて確認出来ます。
なんか凄くマニアックな会話(笑)

ロナルドアイズリーのLalalalaっていうフェイクが、SamCookから引き継がれたものであるように、黒人Vocalistの文化には数多くのイディオム(慣用句)が存在します。
決め技というか、お約束というか。
例えは悪いですが、猪木の卍固めを現代の他の選手が使うことによって、観客にたいする一つのメッセージが成立する、といった感じでしょうか?
Vocalistにとってのそれは、オマージュという言葉が一番しっくりくるように思います。
これはやはりリスナーの音楽にたいする理解の深さ、愛情、歴史の深さがあるからこそ成立する事のように思います。

例えば、日本において山下達郎をリスペクトするアーティストが、自作楽曲のなかで「うお〜ぅおっ」っていう達郎フェイクをやるとどうなるか?
おそらく「達郎のマネだね」と、ただ軽視されるのがオチでしょう(笑)

ちなみにOooWeeってしゃくりあげるフェイク(Caseが特に、Sisqo、K-ciなどが良くやります)も、もともとはCharlieWilsonだったと思います。

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CharlieWilsonについては、初期のGapBandのRecordingにおいて、過剰にキーを低く設定したり、どちらかと言うとバンドが主体のVocalistに見えました。
レコーディングにおいて、リスナーの間口を狭めるディレクションは避けられるケースがほとんどなので、今思えば、アース全盛の当時は彼の歌ぢからの1/10も現れていなかったのだと思います。

(余談ですが、昔、AlexO'nealがジャム&ルイスと喧嘩別れした事件も、そのあたりが原因だったといいます。
Alexの本気歌いに、頭脳派だったJam&Lewisはさんざんダメ出しをしたらしいですね。
後年Soloをやったのは、ある意味Jam&Lewisの贖罪か?)

さて、1/10であれだから、もう間違いなく凄いのですが、、、。
が正直、私にとってCharlieWilsonは食い足りなさを感じるVocalistでした。

しかし、当時、ひょんなことから、CharlieWilsonのGapBand時代のライブ隠し録音を、友人に聞かせてもらいました。
その酷い音質の中から現れた、歌のGrooveの凄さまじさ!
驚きとともに一気に彼を見直しました。
そしてAaronHallやBrianMcknightが、影響を受けたアーティストとして彼の名前を真っ先に挙げている事情が理解できました。
(今ではCDとしてもGapBandのライブは発売されています。
多少編集した感じのものですが。)
その時既に、あのShavadava-di-ti-tiとOooWeeは登場していました。

これは例えばAli-OllieWoodsonなんかにも言えることで、「彼のBestTakeは?」と問われれば言葉に詰まるしかないのですが(強いて挙げるならSpiritualTraveler収録のOooBabyBaby)、しかしそのライブでの歌いっぷりの凄さと言ったら、、、もうあまりに凄すぎて、ほとんどのシンガーが色あせて見える程です。
強いて言うなら、声が、もう雷とかの自然現象に近い感じなのです。
過剰強烈極まりないドロドロのエゴイズム。その追求の果てに、もう澄み切った青空が見えてしまっている、というか。
その後に行ったK-ci&Jojoのライブで、大好きなK-ciがとてもお子様的に見えたのを、よく覚えています。

ブラックのシンガーから尊敬を集めるほどの、本当に歌えるグレート達の実力は、ライブでしか体験出来ないところがある、とその頃から思うようになりました。
しかし彼らは、性格も「俺様的」な唯我独尊タイプですから、レコード会社にしても決して扱いやすいアーティストではない。そのくせ、一部のコアなファンにしか売れないため敬遠される事が多いようです。
自分の理解者やファンに対してはすごく親切らしいですが、権威などはハナから馬鹿にしているアナーキーな面があるのかも知れません(笑)
「プロモーションがなくなっても、俺は歌だけであらゆる観客を納得させられる」、といったプライドの強さかも知れません。
まあ、あれほど歌える男達がもし謙虚なら、私はかえって偽善的で気持ち悪いと思いますが(笑)

日本においてはこういった本物のライブがほとんど全く見れないのが非常に歯がゆく、残念に思います。
ブラック関連の呼び屋が言うには、「どうしても赤字になる」と(笑)。
せめてCaseくらいは呼べないものか?
思い切って、TheTransitionsを呼んだらどうだろう?
などと、知人の呼び屋に言いましたが、なかなか大変なようです。


P.S
フェイクとアドリブは、同じ意味です。
アドリブはジャズから出た言葉なので、バンドマンなどには敢えてフェイクと言う人もいるようですが、日本語としては全く同じ意味だと思います。



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