Tony Toni Tone
"Sons of Soul"
独りっきりのAnniversary
[2002/02/20]

今までずっと本作を紹介しなかったのは、点数つけたら38点になっちゃうから。さすがに世界中のR&Bファンに喧嘩を売るような真似は出来ません。それ位に本作は90年代の重要作に位置付けられているしね。それを後々知ったときは滅茶苦茶驚いた。全く、こんなアルバムを買うのは自分だけじゃないかと、高1の頃思ってたのにね。今になっても自分の中じゃひっそ輝くマイナー盤なんだよなぁ。何故これが大ヒットしたのか分ってない。Bobbyの[Forever]やAsanteの処女作とかが無理なのかが。

本HPは90年代の初期の作品を「同時代に聴いていた」と「幼い頃に出会った」で押し切ってます。やってる本人もオイオイとたまに思う程。その中でも、このアルバム程これで押し切れるアルバムも無い気もする。いつの間にか買ってたんだよね。気付いたら手元にあった。あの頃も3曲ルール(Hit曲が3曲あればアルバム購入)があったハズなのに、高校生になったらたまに衝動的に買ってしまうことが増えた。

Slow WineとPillowとAnniversaryしか気に入らなかったけど、どの曲を聴いて買う気になったのかも忘却の彼方だけど、修学旅行に持っていったことだけは覚えてる。能登半島だった。今でもその時の事を思い出すや。あの頃はカラオケで肩身が狭いことなんて馴れっ子になってた。BoyzIIMenという名前は少しずつ伝わるようになってた。マライアはメジャーだったかな。それでも「トニトニトニを買ったなんて一体誰に言えっちゅーンやい!」。

このアルバムからは3曲が大ヒットしたらしい。って、どれがHITしたのかは知りません。けど、AnniversaryとPillowのビデオクリップは見たから、これらはHITしたのかな? 同時期のR Kellyの[12Play]がHITしてたのはAALIYAHの1stからも分ってた。けど、これは絶対にHitしないだろうと思ってた。特にAnniversaryは。誰がこんなぶっ飛んだ曲を聴くのだろう・・・って。

あの頃を思い出しても、名作と言われ始めてから聴くリスナーは大変だなぁ、、って思う。やっぱりどうしても義務というか、、やっぱりそんなのはあるもんなぁ。まあ最終的にはタイプ的に合う・合わないを除けばコンセンサスには近くなるけど。そして自分は基本的にラファエル・サディークとは合わない。だって彼は良く言えば明るい、普通で言えばおちゃらけ、悪く言えば軽いだもん。Deepな人から見れば、ハマれない軽さだと思う。だから啓志氏もあの本で書いているのだと思う。あそこの意見には全面的に納得する。だって彼は

トリックスター
なんだよね。一言で言えば。本人自身もその役が合っていると思っているのだろうし、だからこそ奇妙な事をノリでやったりするのだろう。って、トリックスターの意味って聞かれると困る。色々と乱読すると自然と身につく概念だと思うが、今の自分なりに説明すると、「ヘンテコなピエロ」かな。ピエロの存在意義が子供の笑顔のとするならば、トリックスターの存在意義は皆を怒らせる為です。と相変わらず適当こいてますが、体感的にはこれが1番しっくりくる。怒らせておいて「あっかんべー」をかますタイプなんだよね。

それでもトニーズのこの本作が重要作なのは、それまでの作品もHITしてる事や、本作のHitや、特にその後の3名のそれぞれのプロデューサー活動の評価もあるからだと思う。今の所、そうやって自分を納得させてます。トニーズはこれより前の作品は持ってません。聴く気が無いからなぁ。だって、若いってことはもっと出てるんでしょー、そりゃパスなんです。
でも、ホントに

清涼感のあるミドルを作らせたらラファエル・サディークが1番
これは本気で思う。そしてSlowじゃプロデューサは乱立だが、清涼感のあるミドルじゃサディークの独断場だよ。それくらいに凄い。自身のおちゃらけさが引っ込んでるからだと思うな。と、前置きが長くなりすぎた。


そのサディークの唯一のDeepな作品がAnniversaryだと思う
特に四分過ぎた後の泣き叫び様は最高!! 彼のファルセットのホントの魅力が出てる。このAnniversaryはマジモン連れ込みDeepだよ。だから好きなんだね。あの頃は一言も言葉に出来なかったけど、今は隅々まで彼の叫びが分る。この曲を鬼の様に聴いてた後、一年後かな?1度ビデオクリップを見たんだよね。見た人は知ってると思うけど、ホントにぶっ飛んだビデオクリップです。岡の上のちっちゃな家で、写真の彼女に向かって独りで椅子に座ってギター抱えて歌いかけてる 昔は「彼女が死んだ」と思ってた。それ位の喪失感が迫ってくるビデオクリップだった。けど違うね。「彼女は単に出ていったのだ」

Dou You Know What today is
素直に「戻ってきて欲しい」と言えばいいのに、「今日は何の日か知ってる?」と呼びかけてる。 だからこそ底なのだ たまんないよ。この感覚は。6分頃のサディークの声は最高!! ビデオクリップじゃ前半四分で終ってた。それが妙にショックだったことを今でも覚えてる。この曲はいつだってトニーズのベストには収録されるけど、前半四分で終りじゃん。それって滅茶苦茶間違ってるよ。滅茶苦茶喧嘩売ってるよ。それくらいならまだ38点の方がマシだと純粋に思うな。

アーティストには怖さが必要なのだ。
相変わらずぶっ飛んだことを言う本HPだが、やっぱりこのラインは正しいと思うな。訳も分らず惚れるときは、アルバムだろうが異性だろうが怖さです。近寄りたい怖さだと思うな。Slow WineとPillowは素直に聴いてイイ曲。誰でも気に入ると思う。Anniversaryは違う。何かをねじり込まれる感覚なんだよね。追っかける程に崖が見える。1番の底は7:16の"Oh"だね。それを受けてバックコーラスが上の歌詞を繰り返す。まったくコテコテDeepのバイブルみたいな曲だよ。

という事で、トニーズのベストで満足するのは間違ってます。きっとサディークは「やり過ぎた」と思ってます。そりゃねー本人の許可なくて、曲を短く出来無いでしょう。そしたら、その「やり過ぎた」にダイレクトに浸る事をお勧め。まったく、いつまでトリックスターをやってるんだが。今度の彼のソロでこのレベルが出るなら間違い無く買います。いつもと一緒なら悩むなぁ。

"Instant Vintage"がタイトルかぁ、、、このInstantが「即席」だとしたらパス。「切迫した」ならかなり期待しちゃう。

本当に気に入った曲が3曲あれば、後は全部飛ばしても「買って良かった」って思えるな。一曲じゃさすがにねぇ。2曲じゃ後1歩。3曲あれば大満足です。ここまで踏み込んだ曲は彼の他の作品じゃ無いし、他のアーティストと比べても滅多に無い。それは断言出来るから。純粋にアルバムを楽しむなら次ぎの[House of Music]をお勧め。イイ曲いっぱい揃ってます。けど、これら3曲には勝てないと思っちゃうが。って、Anniversaryに勝てないのは当然だけどね。


やっぱり90年代を締める為には取り上げざるを得ないし、この作品は1番トニーズの中で傑作だと思う。そして、その中心はAnniversaryのぶっ飛び具合だと思うから。もしR&Bに興味があって、雑誌とかHPとか色々あたって、この作品に興味を持った方に、一応P2S2H2的な御紹介をしようと思って書きました。

歌詞的には普通なんだよね。Anniversaryは。それが曲者だと思う。そんな意味では教えられる事が多い。プロデューサーとしての才能というのも色々大切なのだと実感してるなぁ。
Anniversaryのビデオクリップ見直しました。無いと思ったら押し入れの奥から発見したので。ちゃんと3名がちっちゃな家の中でセッションしてました。独りぼっちじゃなかったです。写真の彼女はたまに笑ったりしてました。もちろん彼女がいないのは当然なのですが、額縁のガラスが割れていたりと、よくよく見ると、大枠は上に書いた感じかと。Deep過ぎることもなく、深みを持たせているビデオクリップですね。サディークのラインを見た気がしました。


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